飲食店などが新型コロナウイルスの感染防止に取り組んでいることを利用者にアピールするため、自治体が発行しているステッカーやポスター。J-CASTニュースが調べたところ、少なくとも34の都道府県と政令指定都市が発行しているが、店の取り組み内容を自治体職員が発行前にチェックしているのは11の道県と市だけだった。さらに実際に店を訪れて点検しているのはこのうち3の県と市のみ。大半は「お墨付き」にはほど遠いのが実態だ。
東京都では江戸川区のフィリピンパブでステッカーを掲示していたにもかかわらず、集団感染が発生したことが2020年8月12日に判明したばかり。都はステッカー掲示店について「感染防止対策を徹底している店」とうたっているものの、実際は都のウェブサイトでチェック項目を入れれば誰でもダウンロードし、印刷できる仕組みだ。
大半の自治体、誰でもダウンロードして印刷可能
都も当初から「都内に飲食店は膨大にあり、実際の対策状況までチェックできない」というスタンスだった。実際、都ではすでに20万枚近くを発行している。発行後に「対策が守られていないのでは」といった都民からの情報がある一部の店については、事後的にチェックすることはあるという。
J-CASTニュースが全ての都道府県と政令指定都市について調べたところ、14日時点で少なくとも34の自治体で同じようなステッカーやポスターなどを発行・作成し、店が掲示できるようにしていた。ただ、このうち23の都府県市は、所定のサイトで店の取り組み内容を入力するなどすれば、ステッカーなどの画像をダウンロードしたりメールで受け取ったりすることができる仕組みだった。
これらの自治体は、「店が安全・安心であると認証するものではない」「あくまで飲食店等の感染防止に向けた自主的な取り組みを促すもの」というスタンスだ。
京都府と京都市は共同で、感染防止対策を遵守する事業者に対し、商工会議所など経済団体を通じてステッカーを配布している。ただ、県ウェブサイトの「よくある質問」で「行政が安心なお店と公認しているということでしょうか」という質問例に、回答として「ステッカーは、ガイドラインに沿った感染防止の取組を行っていることを事業者自らが宣言していることの証であり、行政が安心のお墨付きを与えるものではありません」と記している。
残りの11道県市は書類やメールで受け付け、自治体職員がチェックした上で判断しているが、うち8道県は基本的に書類のみで判断している。中心都市・札幌市の歓楽街・ススキノなどに膨大な数の飲食店がある北海道の担当者はこう説明する。
「飲食店数が多く、マンパワー的に現地調査までするのはつらく、現実的ではありません。それぞれの事業者が取り組み内容を遵守していることをステッカーとして店先に掲示することで緊張感を持ってもらえると考えております」