鉄道大手20社の全てが2020年4~6月期の連結決算で最終赤字を計上した。新型コロナウイルスの感染拡大による鉄道部門の落ち込みに加え、ホテルなどレジャー部門、デパートなどの流通部門などが大打撃を受けた。利用者に鉄道に乗って出かけてもらい、その先で買い物やレジャーなどを楽しんでもらうというビジネスモデルだけでない、さらなる多角化が、各社とも「アフターコロナ」では求められそうだ。
私鉄で最大の287億円の最終赤字を計上した西武ホールディングスは、プリンスホテルなどを運営するホテル・レジャー事業が前年比で78%減となる129億円にとどまった結果、この部門だけで111億円の赤字となった。都市部にあるホテルはインバウンドを含む宿泊客の激減、神奈川県・箱根や長野県・軽井沢などに展開するリゾートホテルも観光客が来なくなり、打撃を被った。
かき入れ時のゴールデンウィークの需要損失が打撃
神奈川県内のホテルの支配人は「夏になっても閑古鳥が鳴いている。『Go Toトラベル』事業で都民が対象から除外されたことも大きく、戻りはにぶい」と明かす。
近鉄グループホールディングも厳しい。2019年4~6月期のホテル・レジャー部門の売上高は1265億円と、本業の運輸部門の572億円を上回る規模だったが、20年4~6月期は95%が消え、61億円に。同社全体の最終赤字は私鉄で2番目に大きい239億円を計上した。
ホテルの宿泊客が減ったのみならず、傘下の旅行会社が主催するツアー旅行が4月以降、国内、海外とも相次いで中止となった上、5月前後に多い修学旅行など団体旅行も、軒並み中止・延期となった影響が大きいという。
「京都や奈良、伊勢などの観光地に、特に例年はかき入れ時のゴールデンウィークに、インバウンド・国内問わず観光客がほとんど来ていただけなかったのが響いてます。人件費など固定費もかかりますので、大赤字です」(旅行部門の担当者)
こうした傾向は、沿線に観光地を抱え、ホテル運営会社をグループ内に持つ東武や京急なども同様だ。21年3月期通期の業績予想ではレジャー事業の営業赤字を東武が117億円、京急が29億円と見込んでいる。新型コロナウイルスの「第2波」の悪影響を受ける夏のみならず、秋・冬にかけても影響が長引きそうだ。