定期代の支給やめた企業も 通勤路線に打撃
通勤路線での落ち込みの要因は、やはり企業が進めるテレワークだ。国の緊急事態宣言が出ていた4~5月、鉄道は時間帯問わず、どの路線もガラガラだった。この間、交通費の社員への支給をしなかった企業も多く、東急の場合定期券収入は前年同期比で39%減った。小田急、京王もそれぞれ33%減だった。
テレワークの定着が進むと、通勤路線を抱える鉄道会社への影響は大きくなる。鉄道は、燃料代などが膨大な航空機と異なり、1運行あたりの費用は電気代や乗務員らの人件費くらいだ。とはいえ、それも安定的な定期代の収入があってこそだ。
大手企業でも、テレワークの代わりに定期代の支給を取りやめる例が出ている。富士通は7月6日に「ニューノーマルにおける新たな働き方『Work Life Shift』を推進」と題した報道資料を発表。約8万人の従業員をテレワークにし、月額5000円の在宅勤務手当の代わりに、「通勤定期代の支給廃止」とある。
例えば、JR東の東京―新宿間(約10キロ)は月の定期代が5930円だ。10キロより遠い場所から通勤する人も多く、月額5000円程度の在宅勤務手当を出す方が、結果的に企業にとっては大きな経費削減となる。
鉄道会社側も対策を取り始めている。
JR東は7月7日、深沢祐二社長が定例記者会見で、「以前のように利用客は戻らないと思う」との見通しを示し、通勤・帰宅で利用客が多い時間帯と、少ない時間帯で運賃が変動する新たな料金体系を検討する可能性を示した。「3密」を少しでも緩和し、通勤客の利用を促す施策と言える。