新型コロナウイルスのクラスターが発生した東京都江戸川区内のフィリピンパブでは、感染対策をしたと店が宣言する都の「虹のステッカー」が貼られていたと報じられ、その有効性についてネット上で疑問の声が相次いでいる。
ステッカーを貼るのに必要なガイドラインが守られていたかは、まだ不明だ。都は、「守られたか確認する」として、店の了解を得て一時ステッカーを撤去した。
自己申告だけで掲示できる制度に、「ザルすぎる」の声も
「ザルすぎる・・・」「安心を優先し安全がおざなりに」「こんなステッカー制度、設けること自体が無駄」...
店に貼られていた感染防止徹底宣言ステッカーは、都の防災サイトで対策項目にチェックを入れただけの自己申告で自ら印刷して掲示できる――こんな内容が、クラスター発生の発表があった2020年8月12日にメディアで報じられると、上のような辛らつな声がツイッターなどで相次いだ。
この店では、60代の男性客が感染したことが7月30日に分かり、店の従業員12人全員がPCR検査を受けたところ、20~40代の女性7人の感染が分かった。濃厚接触があったからで、客にかなり近づいて接客していたわけだ。店は、4日から休業している。
ステッカーの掲示店でクラスターが発生したことについて、小池百合子都知事は13日、ガイドラインを守っていない店もある可能性を認め、「中には実践もせずに、ただ貼ってつけておけばいいやみたいな事業者がいないとは限らない」と述べた。一方で、「お店の体制とともに、そういった場を利用するという利用者の認識も必要だ」と客側の問題も指摘した。
都のステッカーについて、ツイッター上などでは、様々な意見が寄せられている。
ガイドライン守られてなくても、お願いするしかできず
ガイドラインを守らないでステッカーを貼る店が出ることについて、ステッカー掲示が20万円の感染拡大防止協力金を受ける条件の1つに挙げられていることがあるのでは、との声が出た。
もしガイドラインを守っていなかったとすれば、景品表示法違反(優良誤認)に当たる可能性もあるのではないか、との見方も示された。店に守ってもらうためには、都が店の感染対策をチェックしたり、条例を改正して罰則を設けたりするべきとの意見も出ている。
もっとも、「お客様がコロナ持って入られるのだから、お店ばかり責めるのはおかしい」といった指摘はあった。
クラスター発生の店がガイドラインを守っていたかについて、都の防災管理課長は8月13日、「まだ確認できておらず、店と時期を調整して、どういう対策をしたか確認します」とJ-CASTニュースの取材に答えた。
そして、確認できるまでステッカーを預かるとして、同日12時ごろ、都の職員が店の了解を得たうえで店のあるビルの1階フロアに掲示してあったステッカーをはがして撤去したことを明らかにした。
もしガイドラインが守られてなかったとしても、ステッカー制度は法に基づくものではないため、指導などはできず、足りない部分の対策をやってもらうよう依頼するしかないという。
「今後については、何かしらのチェック体制ができるか、都の職員を含めて現地確認ができるか、などを検討しています。実効性がある必要はありますが、ステッカー制度は、引き続きやる予定でいます」
景品表示法の適用は考えておらず、条例改正も予定していないという。
都のコールセンターには、「ステッカーが貼ってあるけど、店に消毒液がない」「席の間隔が狭い」などの声が1日数件寄せられているとした。これに対し、それぞれの店にアプローチはしていないものの、一定数になった段階でそれも検討したいとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)