輸入はそれほど減っていない、つまり...
今回の経常収支減少をどう読むのか。それは、その中身をみればいい。大きく輸出が減少しているが、輸入はそれほど減っていないというのが今回の特徴だ。それに、訪日観光客が減っているのも寄与している。輸出が減るというと、訪日観光客が減るのは、モノとサービスという違いはあるが、外国での需要が減っているという意味では同じだ。外国の需要が減るのは、コロナによるモノやサービスの制限も一部原因であるが、基本的には外国の景気がよくなく、日本製を買わないからだ。これは外国の所得(GDP)が減少しているときによく見られる現象だ。
一方、輸入がそれほど減っていないというのは、日本の所得(GDP)は減少しているが、外国ほど酷くないことを示している。つまり、経常収支黒字の減少は、日本は海外より景気の点では、ましなことを意味する。
米国の4-6月期実質GDPが年率▲32.9%(年率換算、以下同じ)ユーロ圏が▲40.3%となった。日本の4-6月期GDPの一次速報は、8月17日に発表される予定だ。1-3月期と比較すると、▲25%~30%程度と大幅に減少するだろう。4-6月期GDPの数字自体は百数十兆円もあり、水準は戦後最悪ではないが、1-3月期からの伸び率▲25%~30%程度はおそらく戦後最悪だろう。しかし、それでも欧米に比べるとまだましだ。
まあ、戦後最悪であるが、海外よりは少しましというのは、目くそ鼻くその議論かもしれないが、「川を上り海を渡る」(歴史を調べ海外を調べる)から現状を正しく認識するためには指摘しておきたい。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「FACTを基に日本を正しく読み解く方法」(扶桑社新書)、「明解 経済理論入門」(あさ出版)など。