楽器メーカー大手、ヤマハの株価が2020年8月5日の東京株式市場で一時前日終値比9.8%安の4755円まで下げた。前日の取引終了後にヤマハが発表した21年3月期連結決算(国際会計基準)の業績予想で、純利益が前期比53.8%減の160億円に落ち込むと見込んだことでコロナ禍の下での楽器販売の厳しさが印象づけられ、売りが集まった。この急落後はやや持ち直しているものの、1月の年初来高値(6250円)が遠いことには変わりない。
では業績予想の材料となった8月4日同時発表の2020年4~6月期連結決算内容は、どのようなものだったのか。売上高にあたる売上収益は前年同期比27.9%減の717億円、本業のもうけを示す事業利益は89.5%減の11億円、純損益は18億円の赤字(前年同期は72億円の黒字)と赤字に転落した。楽器等の販売減に加えてコロナ禍での工場の操業停止損を25億円計上したことなどが赤字の要因だ。
「厳しい事業環境の中では健闘した印象」との見方も
事業別にみていくと、主力の楽器事業は売上収益が30.9%減の466億円、事業利益は74.5%減の25億円だった。アコースティックピアノ(電子ピアノではない普通のピアノ)と管楽器は店舗閉鎖の影響を受けて減収。一方、EC(電子商取引)の比率が比較的高いギターは国内や欧州で増収となり、全体として前年並みの売り上げを確保した。
音響機器事業は売上収益が21.3%減の195億円、事業損失が10億円(前年同期は8億円の事業利益)。業務用音響機器はライブ市場の縮小により減収。オーディオ機器も地域によってデコボコある(ヤマハの海外売上高比率は約7割)が全体として減収だった。世界的にとても楽器やオーディオ機器を買おうという気になれなかったとみられる期間だけに、「厳しい事業環境の中では健闘した印象」(SMBC日興証券)との見方もあった。