「日本人はシュートが下手」。日本サッカー界で延々と語られる「課題」の1つだ。ゴールバー上空にシュートが外れると、インターネット上で「宇宙開発」と揶揄されるのもお決まりとなっている。
今回、海外スターを含むJリーグ歴代名ゴール&アシストを厳選したDVD『Jリーグ メモリーズ&アーカイブス』をプロデュースしたサッカージャーナリスト・石井紘人氏(@targma_fbrj)が、「日本人のシュート問題」について論じる。「下手」な原因は何なのか、石井氏の寄稿を掲載する。
「ボールを貰うまでの予備動作、シュートフォームを見る必要がある」
なぜ、日本人はシュートが下手だと言われるのか?
関西国際大学の坂本康博総監督(大阪体育大学名誉教授)は指導の質に問題があると指摘する。
「シュートが外れると、テレビ解説では『シュートが外れました』『相手が寄せてきましたからね』で終わりますが、実際には、ボールを貰うまでの予備動作、さらにシュートのフォームを見る必要があります」
日本では「蹴る時は軸足を強く踏み込んで蹴れ」「蹴り足のヒザから下をシャープに振れ」と指導する。
これは軸足を強く踏み込めば、蹴り足をそれほど振れなくても強いシュートを打てるし、ヒザから下をシャープに振れば大振りにならないからだろう。
だが、サンフレッチェ広島のフィジカルコーチを務める池田誠剛氏は「大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)はブレーキをかける作用を持つ筋肉。軸足を強く踏み込めば走ってきた勢いに急激にブレーキをかけることになる」とこの指導に疑問を呈していた。
坂本総監督も選手の軸足を見て「あぁ」と叫び、シュートが外れるのを予期していた。
カカトから強く踏み込むと、身体にブレーキがかかった状態になり、蹴り足がボールに当たった後のフォロースルーが乱れる。結果、シュートが浮いてしまう。
「スピードを殺さずにボールを押し、フォロースルーで運ぶように」
では、どのようなシュートをすべきか。
それについて、池田氏が『サッカー批評issue.29』(双葉社)でも詳細に語っていたので抜粋する。
「世界のトップレベルの選手を見ると、お尻の下からハムストリング(太ももの裏側の筋肉)にかけて非常によく発達しています。これは彼らが大腿四頭筋とは反対に身体を加速させる筋肉を使ってボールを蹴っているからです。ロベルト・カルロスのFKは典型的でしょう。長い助走距離から最大限に加速して走り抜けるような蹴り方を見せられると、その違いを痛感させられます」
池田氏の「走ってきたスピードを殺さずにボールを押して、フォロースルーで運ぶように」というシュート理論がスタンダードになって欲しい。
(石井紘人)