2020年上半期(1~6月期)の世界の自動車販売台数は、トヨタ自動車が子会社のダイハツ工業と日野自動車を含めたグループ全体で416万台となった。トヨタグループは独フォルクスワーゲン(VW)グループの389万台を抜き、上半期としては6年ぶりに世界首位に返り咲いた。
日産自動車、三菱自動車、仏ルノーの3社連合は345万台で3位となった。
一概には比較できないが...
トヨタが7月30日に発表した上半期の販売実績によると、1~6月の世界販売は新型コロナウイルスの影響などで振るわず、4年ぶりの前年割れとなった。しかし、6月は前年の84.0%の水準まで回復し、「グローバル販売は6月から回復傾向が見られる」という。
実際、8月6日に発表された4~6月期決算では、純利益1588億円と黒字を確保。他の大手がそろって赤字、しかも巨額の赤字を出す中、「底力」(日経)を見せつけた格好だ。
世界の自動車販売はトヨタとVWの一騎打ちのような様相を呈しているが、トヨタとVWはグループの性格が異なるため、本来は販売台数で単純比較できない点に注意が必要だ。
日本でVWは「ドイツの大衆車メーカー」というイメージが強いが、ドイツ国内ではアウディとポルシェを傘下に収めている。欧州では1980年代から拡大路線を強め、スペインのセアト、チェコのシュコダを買収した。いずれも欧州で安価な小型乗用車を量産する地場のメーカーだ。日本でも同じく小型車を量産するスズキと資本関係を結ぼうとしたが、スズキが反発し、折り合わなかったのは記憶に新しい。
VWは高級車やスーパーカーにもウイングを広げ、1990年代後半以降は英ベントレー、仏ブガッティ、伊ランボルギーニという高級ブランドをグループに加えた。
さらにイタリアの2輪メーカーの名門、ドゥカティのほか、バス・トラックの商用車メーカー、スウェーデンのスカニアと独MANとも資本関係を結び、現在は12ブランドを擁す一大グループに成長した。
多様性・ブランドで優位に立つVW
トヨタとVWはグループ内に乗用車と商用車メーカーを抱える点は同じだが、VWは量産メーカーだけでなく、2輪車や少量生産の高級車やスポーツカーのメーカーを多数そろえているところが異なる。
グループが生産・販売するクルマの多様性やブランド力で、トヨタはVWにかなわない。VWグループが「名実ともに世界トップクラスの自動車メーカーに成長した」と自負するのはそのためだ。そのVWは2016年に年間の世界販売台数で初めてトヨタを抜いてトップとなり、その後は年間首位の座を維持してきた。
今回、トヨタは上半期として6年ぶりにVWを抜いたが、年間でも首位を奪還できるか注目される。
一方、日産・ルノーグループは、2016年に燃費不正問題で経営危機に陥った三菱自動車を当時のカルロス・ゴーン会長が傘下に収め、現在の3社連合となった。3社連合は2017年と2018年に世界販売でトヨタグループを抜き、2位に浮上したが、カルロス・ゴーン元会長の拡大路線が行き詰まり、2019年はトヨタが再び2位となっていた。
コロナ禍の影響で、世界の自動車販売の行方は見通せないが、気になるのは日産・三菱・ルノー3社連合の不振ぶりだ。
日産自動車は2021年3月期の連結最終損益が6700億円の赤字になる見通しだと発表した。2020年3月期も6712億円の最終赤字となっており、2年連続となる。三菱自動車は2021年3月期の最終損益が3600億円の赤字になるとの業績予想を発表している。
ルノーの2020年1~6月期決算は、最終損益が72億9200万ユーロ(約9000億円)の赤字だった。1~6月期が赤字となるのは2009年以来11年ぶりで、過去最悪という。かつて日産ルノーグループは、日産の収益が大株主のルノーを支える形だったが、現在の3社連合に稼ぎ頭は見つからない――。