新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、多くの同人誌即売会が開催の中止となり、「エアイベント」といったオンラインイベントや、バーチャル空間での同人誌即売会を試みる動きが広まっている。
一方で、感染症対策を実施したうえでのオフラインイベントを模索する動きもある。J-CASTニュースは、そのようなウィズコロナの同人誌即売会に出展したサークル参加者に、イベントの様子や感染症対策について、メールやツイッターを通して取材を行った。
「イベント自体はコロナ渦前と比べると参加率は低く、まったりとした雰囲気」
赤ブーブー通信社は2020年8月2日、感染症対策を講じ、東京ビッグサイト青海展示棟で同人誌即売会「TOKYO FES Mar.2020」を開催した。展示面積は2万3240平方メートルで、そこそこ大きなイベントだ。参加者の検温や換気のためのシャッターの解放、物理的距離を確保した館内レイアウトを行うなどの対策を取り、参加者にはマスクの着用や「b2-online入場認証システム」への登録を呼び掛けた。b2-online入場認証システムでは、万が一感染者が発生した場合に、クラスター対策が取れるよう、個人を特定しない形で感染発生の通知メールを行う。
同イベントにサークル出店で参加した「ぢゅびろ」さんは、
「イベント自体はコロナ渦前と比べると参加率は低く、まったりとした雰囲気でした」
と語る。感染症対策は参加者によって多様だったとし、ツイッター上にイベントの感想を投稿した。
ぢゅびろさんは、用意してよかったものとして飛沫防止の「ビニールカーテン」を挙げる。スーパーや商業施設百貨店のものを参考にして自作したという。必要なものは、T字型ポスタースタンド、ビニールカーテン、突っ張り棒、テープ。
「イベント設営時に使用しているT字型ポスタースタンドを用いてビニールカーテンを吊るしました。更に、カーテン上部の筒穴に突っ張り棒を通して垂れ落ちないよう工夫しています。また、下部の方は風でなびかないようテープ留めしました」
また、別の方法でビニールカーテンを設置したサークルも参考になったと述べる。
「OPP袋のような薄手で透明感がある袋をつなげていたのが良いですね。設営に少し手間はかかりますが軽くて持ち運びしやすそうだなと。自分が使用したビニールカーテンは厚手でしっかりとした作りですが、折ることができず持ち運ぶのに嵩張るため、荷物をコンパクトにできるようにしてみたいですね」
ストローや電子決済に注目するサークルも
8月2日には、広島でもスタジオYOU主催のオールジャンル同人即売会「広島コミケ235」が開催された。このイベントに参加した「月光星」さんによると、サークル参加者はビニールカーテン又はフェイスシールド必須だったとし、フェイスシールドを着用。さらにビニール手袋も持参したが、熱中症などの懸念から着用を断念したとのことだった。
多くの同人誌即売会は、コロナ禍以前から熱中症予防を呼び掛けている。6月27日に東京流通センター行われた同人イベント「レインボーフレーバー22」に参加したkasumiさんは、J-CASTニュースにこう語った。
「途中、水分補給のためにペットボトル飲料を飲むのですが、その都度マスクを外さないといけなかったので、ストローなどがあるとよかったかな、と思いました」
さらに、水分補給と併せて昼食の感染症対策も課題になるのでは、という見方を示した。
「イベント中、サークルスペース内で『お昼ご飯(コンビニのパンとかおにぎりなど)』を食べたのですが、周りの通行者が多い状況で、マスクを外してサークル内でご飯を食べるのがかなり怖かったので、この先のイベントではお昼ご飯をどうするのか、も課題になってくると思います。(別の場所で食べるか、ゼリードリンクみたいなのでしのぐか、食べないか・・) 『お昼ご飯対策』は意外と見落としがちでした」
また今回取材を行った3人のサークルは、「お釣り対策」として手が触れ合わないようコイントレイ(カルトン)を用いた。しかしイベントでは、電子決済を導入するサークルも見られたとし、次回から導入したいと語るサークルも。これまでの同人誌即売会でも電子決済を導入しているサークルはいくつか見られたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で以前よりも注目が高まっている。
頒布部数が「5分の1」に
現在はこのような努力のもとで、同人誌即売会が開催されている。しかし、kasumiさんによれば同人誌の頒布部数は例年の5分の1に落ち込んだという。Kasumiさんはその背景について、自身のブログ「プリキュアの数字ブログ」でこう分析した。
「サークル参加、一般参加ともにいつもの3分の1位の規模だったので、そんなものなのかなと思います。会場をブラブラ見て回る、というよりも『目的の本のみを買う』方が多かった様です。この先の同人イベントでは『ウインドウショッピング型』のぶらぶら見て回ってピンときたものを買う、といった購入スタイルは減って、目的の本を事前に調べてそれのみを買うスタイルになっていく様な気がします。そうなると『事前の告知』が今まで以上に更に重要になってくるのじゃないかと思います」
このように頒布数や参加者数の減少、たくさんの課題はあるものの、サークル参加者たちはみな楽しかったと述べる。ぢゅびろさんは、イベントの感想についてこうコメントした。
「そんな中でもお立ち寄りいただいてご購入された方がいらっしゃり、いちサークル主として大変嬉しかったです。とても励みにもなりました、有難うございます!同人を嗜まれる皆さま各々の事情でイベント会場に赴くのが大変難しい状況であったり、参加に対して大きい不安を抱えている方は少なくないと思います。参加を悩まれている方はぜひとも、今回自分が発信したものだけではなく、他の方のレポートや感想をご覧になって参考にされてみてください」
月光星さんは、イベントの参加については悩んでいたと葛藤を明かした。
「広島コミケは見た目沢山の人が賑わう、怖いという印象は持ちませんでしたが私もサークル参加に非常に悩んでいました。心の中では運営側が中止してくれないかと、前日までねがっていたくらいです。けちな話になりますが中止にならないと金銭の払い戻しなどがないので、、、と思い近隣だったこともあり参加を決意しました」
しかし、イベント自体は楽しかったと述べる。
「イベント自体は変わらず楽しかったです!喋るのは申し訳ないので お手紙をもってきて下さった人がいて、とても嬉しくかんじました」
kasumiさんも、今後できる範囲で参加したいと抱負を述べた。
「イベント自体はいつもと変わらず楽しかったですし、運営側も対策はしっかりしていたと思います。同人イベントの火を消さないためにも、今後も出来うる範囲で参加していきたいとは思います。(が、同人イベントでクラスタ発生、となって同人イベントがバッシングされてしまうのも怖いので悩みどころです)」
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)