NHK「受信料値下げ」踏み込まず 次期経営企画案、事業スリム化は進めるが...気になる「一本化」の行方

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「コロナ」など理由に値下げ見送るも、国の要請次第で...

   結局、受信料体系の見直しについては、8月4日に公表された次期経営計画案には盛り込まなかった。4日午後に記者会見したNHKの前田晃伸会長は「受信料引き下げをするだけで、1年以上かかる」と述べており、料金見直しについて表に出せるにはまだ時間がかかるようだ。

   NHKの年間の受信料収入は約7115億円(19年度)。公共放送制度を持つ諸外国と比べると、ドイツの公共放送に次ぐ高い水準で、2010年代後半からほぼ右肩上がりで増えている。番組制作や設備投資に潤沢な経費を使えることから、広告収入が頭打ちの民放から「肥大化」や「民業圧迫」との批判がある。

東京・渋谷のNHK放送センター
東京・渋谷のNHK放送センター

   中でも問題視されているのは衛星放送だ。総務省の有識者会議「公共放送の在り方に関する検討分科会」(20年7月30日開催)では、NHKの衛星放送の契約は「月額1000円程度で提供されている主なインターネット動画配信サービスと比べて割高」と指摘された。

   受信料の徴収率も、他国が軒並み90%以上の中で82.1%と低く、一方で受信料収入の1割超の723億円(18年度)も費やしている徴収費用などと合わせ、受信料制度の改革を求められていた。

   有識者会議のこうした提言に対し、前田会長は7月2日の定例記者会見で、「衛星放送の料金だけでなく全体を見直す必要がある」との認識を示していた。8月4日に公表した次期経営計画案はその「宿題」のうち、支出のスリム化については示したと言える。

   しかし収入については、大幅な減収が想定されるとして21年度の水準を維持するとしている。20年10月から衛星契約で月60円、地上契約で月35円を値下げすることがすでに決まっており、その影響で減収が予想されることと、コロナ禍による受信料の免除や経済情勢悪化に伴う契約件数の減少などが影響すると見込んでいる。

   ただ、前回の経営計画案(18~20年度)でも値下げについて盛り込まなかったが、後に総務省の要請を受けて値下げを決めた経緯がある。高市早苗総務相も受信料制度の見直しが必要との考えを示しており、さらなる値下げを行う可能性は残されている。

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