この夏に旅をする人にとって、気になるのは不特定多数の人が利用する乗り物の新型コロナウイルス対策だろう。通勤電車やバスでは車内の窓開けによる換気が当たり前になったが、新幹線は窓が開かない構造だ。高速バスや夜行バスも高速道路などを走行中は窓も乗降ドアも空けるわけにはいかない。旅の快適さと安心を両立させるための対策は、どうなっているのか。
例えば、東海道新幹線「のぞみ号」の場合、新横浜-名古屋間で約1時間20分もノンストップだ。乗降ドアも開かない「密閉」空間となる。「三密」の中のうち「密集」「密接」は何とか自分で避けることができるが、「密閉」は難しいことが多い。
煙充満し真っ白の車内、数分経つと...
新幹線を運行するJR各社によると、新幹線は常に外気を取り入れて車内の空気と入れ替える空調・換気システムを搭載しており、「約6~8分で車内の空気は入れ替わる」(JR西日本)。「高速鉄道」に対して国は換気の基準を定めており、それを十分に満たす性能だという。このシステムが正確に動作しているかを監視するシステムも備わっている。
JR西日本は、運行する北陸新幹線の車内に煙を充満させ、実際にどれくらいで換気できるかを実験した映像を公開している。動画によれば、最初は真っ白でカメラのすぐそばの座席さえ見えない状態だったのが、4~6分ほどでほぼクリアになり、約8分で確かにほぼ煙はなくなった。
新幹線の座席状況も気になるところだ。ツイッターへの投稿などによると、7月23日からの4連休の初日や最終日には、一部の新幹線で満席状態の便もあったようだ。
新幹線の場合、中央席を販売しないといった制限は行っていない。一方で従来から、JR東海のネット予約サービス「エクスプレス予約」「スマートEX」のように、各新幹線ともインターネットで新幹線のシートマップを見ながら、空いてそうな座席を確保できる。それでも、乗ってみると混み合うこともあり得る。各社は混雑状況に応じて、「柔軟に座席の変更に応じる」としている。
また各社とも、新幹線車内のトイレやドアノブ、そして駅の切符売り場など、人が触る可能性がある場所の消毒も徹底するようにしているという。
ちなみに、座席を回転させて乗客同士が対面状態になる形での利用は、「お控えください」(JR東海)とのこと。グループ客同士が対面で飲食しながら談笑する風景も、しばらくは見られないだろう。もちろん、各社は乗客への車内でのマスク着用も呼びかけている。
狭いバス車内、感染対策と快適さどう両立?
高速バスの場合も、新幹線と同様に外気と車内の空気を入れ替える換気システムを搭載している車両が増えている。高速バス「WILLER EXPRESS」を運行するWILLER社も、実験映像を公開している。
バスの場合は新幹線などより座席が狭い場合が多い。WILLER社は6月から、従来から多くのバスに導入しているカノピー(顔を隠せるフード)に、新たに飛沫感染対策フェイスカバーを装着したほか、7月からは隣席との仕切りの高さを顔の高さまで上げることにした。「周囲との飛沫接触を避けるとともにプライベート感もアップし、快適にご乗車いただける」(同社広報担当者)という。
バス会社の中には、隣座席や前方の座席を空席にするなどの措置を続けているところや、乗車人数に合わせてなるべく離れるように座席をその都度配置するところもある。
各社とも実際の混雑状況に応じて対応することになるので、事前に確認してみるといいだろう。