母親たちが「壁」を作って抵抗
ポートランドでは連邦政府の介入を受けて、デモ隊の反発は高まった。暴力や破壊がエスカレートし、もはや戦場と化した。複数の報道によると、連邦職員が発射したゴム弾やこしょう弾で、デモ参加者だけでなく報道陣や救急隊員も負傷しているという。
母親たちが一列に並んで壁を作り、「私たちの子供らに手を出すな」とデモ隊と連邦部隊の間に立ちはだかった。さらに、父親たちや元軍人らの壁もできた。
身分証をはっきり示していない迷彩服姿の連邦当局者が、所属表示のない車を使い、説明もなくデモ参加者を拘束した、との批判の声が上がっている。
7月23日、米司法省のホロウィッツ監察官は、オレゴン地区連邦検事と下院民主党の要請を受け、ホワイトハウス近くのラファイエット広場で行われた抗議デモに対する警察の実力行使と併せて、ポートランドについても政府の規制に従っていたか、事実関係を調査すると発表した。
オレゴン州や市の指導者は「連邦の権力乱用」だとし、ケイト・ブラウン知事(民主党)は連邦職員について、「占領軍のように振る舞い、暴力を引き起こした」と指摘。ポートランドのテッド・ウィーラー市長(民主党)は「連邦当局に来てほしいと頼んでもいない。介入が事態を急速に悪化させ、破壊行為を拡大させている」と反発、撤収を求めた。
連邦職員の攻撃で怪我をしたデモ参加者たちについて、日系人のヒロキは言う。
「情報や動画の一部だけを切り取って、連邦職員の暴力ばかりが強調して語られるけれど、連邦職員に(家庭用ではない)花火を投げつけたりして、暴力を挑発しているように僕には見える。すべてがそうではないのかもしれないが、連邦職員や警官が暴力的な手段を使う前に、『その場から撤退しろ、武器を捨てろ』などと何度もメガフォンでデモ隊に伝えている。そして、相手が力で抵抗してきたら、力で押さえつける以外にないのではないか」
AP通信はマスメディアとしては珍しく、デモ隊のいる外と、連邦の建物内の両方を取材している。外からの攻撃を避けるために明かりを消し、暗がりの中で身の危険を感じながら建物を守る職員の声、負傷する職員の姿も伝えた。デモ隊が発したレーザーを目に受け、失明の可能性が高い職員もいる。
ポートランドはリベラルな気風が強く、ヒッピー文化の影響も強く受けてきた。ここに住む人たちの多くは、「自分たちの手でコミュニティを作り上げてきた」という思いが強い。
住民のなかには、「連邦政府は自分たちの街のことに口を挟むな。介入してくるまで、抗議デモは平和的に行われてきた」「暴動が起きているのは、わずか2、3ブロック。街のほとんどは平和だ」と主張する人たちも多い。