転機となった「cero」と「サザン」
ライブ会場に客を呼べない状況で、業界はどうやってマネタイズをしていくのか。出された答えの一つが、3月13日にロックバンド「cero(セロ)」が行った無観客ライブの有料配信だった。ceroはこの日、宮城県仙台市でライブを予定していたが、公演が延期に。その代わりに、チケット代1000円を徴収して無観客のライブ映像を配信する試みを実施した。このライブが音楽ファンの間で注目を集めたのだ。
柴さんはceroのライブについて、
「会場にお客さんを入れずにライブをやり、チケットを売り、生配信で見せることによってエンターテインメントを成立させた。当時『お金を取ってライブ配信をやる』という常識が形成されていなかった中で、『ライブにお金をとっていいんだ』とポジティブな反響があった」
と分析する。
ceroを起点に始まった「ライブの有料配信」という手法は、緊急事態宣言解除後の6月以降に日の目を見ることになった。中でも大きな注目を浴びたのが、6月25日に横浜アリーナで行われたサザンオールスターズの無観客ライブだ。8つのプラットフォームを通じて配信されたライブでは、約18万人が3600円のチケットを購入、推定視聴者数は約50万人と報じられた。サザンが与えた影響について、柴さんはこう語る。
「大衆レベルでは、配信ライブにチケットを買って参加するという行為が定着していなかった。その中で、サザンのライブは『新しいライブの形なんだ』という一つのシンボルを示した」