「シャッツキステ」店主が14年間の思い語る 名物メイドカフェの「閉館」...コロナ禍と、変わる秋葉原と

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突如襲い掛かったコロナ禍

 

   ところが、コロナ禍はメイドカフェ業界にも容赦なく降りかかった。シャッツキステでもこれまでのような営業はできなくなる。営業はできても現場のメイドたちは少しの体調不良でも休むことになり、イベントはできず、市中の感染状況次第で臨時休業となる可能性もある。やらなければいけない課題が有井さんの双肩にのしかかった。

    実は有井さんは今秋頃から家庭の事情で3年ほど海外で暮らす予定で、また2児を育てる忙しい日々でもあった。有井さんがいなくても運営が回るよう計画してきたものの、店舗を続けるならゼロからの経営の再設計が必要だ。「私不在でこの先の見えない状況を丸投げする事は、ただただメイドたちを苦しめる事になります」と悩んだ。

    現場の士気や客が安心できる環境を整えたい責任感、また「家にいて人と接触しないよう推奨される中で、育児のためとはいえ自分は安全な家にいながら、店舗を継続させるために、お客様やメイドたちには出勤や来館を促さなければらない(危険に晒すことを考えなければならない)事に耐えられません」と考えて、幕を閉じることを決めた。

   ただ、新型コロナの影響だけでなく、秋葉原やオタク文化のあり方も店を始めた頃とは変わっていたのも確かだと有井さんは話す。知る人ぞ知るマニアックな店が撤退し、再開発で大手資本の小売店が増えてきた。メイドカフェも店員とのコミュニケーションを楽しむスタイルが主流になっている。好きなものを究める昔ながらのオタク像も変わり、オタク趣味を公言しても日陰者扱いされない世の中になった。

「メイドが営む『オタクの遊び場』とのコンセプトのもと、アキバに"在り続ける事"に価値を見出し、力を注いできましたが今回のコロナをきっかけに社会の意識が変わり現実の土地に在る事のメリットは大幅に減りました」

   自身の人生の転機や激変した世の中、といった諸事情を鑑みての有井さんなりの決断だった。

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