「解散通告」の正当性は? それぞれの見解
それにしても、なぜ唐突に解散通知を出したのか。石川区長は28日に開いた記者会見で、解散通知を出した理由について、12万円の給付案が議会で「疑惑隠し」と指摘されたことに触れた上で、こう主張した。
「私たちと区議会とが、建設的、正常な議論ができない。有権者に(選挙を通じて)しっかりと客観的に判断をしていただきたいという思いで、解散を区議会議長に通告しました」
そして、仮に刑事告発が検察に受理され、捜査の上で起訴に至れば失職事由になることもあるとして、「区長としてふさわしくないと区議会が(実質的な不信任を)突きつけたと思っています」と主張した。
一方、通知を受け取った区議会の小林孝也議長は激しく反発した。
「解散通知書は何ら法的効力もありません。コロナウイルス陽性者が増加する中、石川区長の、区政を混乱に陥れる暴挙を到底許すことはできません」
石川区長の解散通知に正当性はあるのか。地方自治法を所管する総務省自治行政局の担当者は一般論と断った上でこう解説する。
「地方自治法178条で『不信任が議決された時に首長は議会を解散できる』と定めていますが、議決が不信任と認められるかどうかは議会において判断されるものです。また不信任である旨を議長から区長に通知するなど、正規の手続きを踏む必要もあります」
小林議長は、27日の議決はあくまで刑事告発についてであって、「不信任の議決ではない」と説明している。不信任を議長から区長にも通知していないという。区長の「不信任を受けた」とする主張は、どうやら独自の解釈のようだ。
この騒動、千代田区民はどう見るか。29日正午過ぎ、東京・九段下の区役所近くで犬の散歩をしていた自営業の男性(63)は憤る。
「コロナで困ってる人が区内にもたくさんいるのに、区民そっちのけで政争している場合じゃないでしょう」