サッカーJ1名古屋グランパスの選手・スタッフから3人の新型コロナウイルス陽性者が出た影響で、2020年7月26日に予定されていた第7節サンフレッチェ広島対名古屋戦(エディオンスタジアム広島)は試合当日に急遽中止した。Jリーグ再開後の試合中止は今季初めて。
今後、代替日程を調整する予定だが、ただでさえ過密日程が組まれている中、さらなる過密化は避けられない。新規感染者が増加傾向にあるここ最近の状況に鑑みれば、同様の事態はどのクラブにも起こり得る。入念な準備のうえで再開させたJリーグだが、新型コロナ対応の難しさを改めて示されることとなった。
濃厚接触者の特定が間に合わず
名古屋は24日、DF宮原和也(24)のPCR検査陽性が判明。25日に選手・スタッフ60人にPCR検査を実施し、MF渡邉柊斗(23)とトップチームスタッフ1人も陽性の結果が出た。3人の陽性の影響で、広島戦は試合当日の26日に急きょ中止が決定。名古屋はクラブ独自のPCR検査を27、29日に、Jリーグも公式PCR検査を31日に、それぞれ実施する。
中止となったのは、渡邉とスタッフの2人の陽性判明が試合前日の夜だったことも関係している。広島戦に向けて16選手と1スタッフがすでに現地入りしていたが、この中に濃厚接触者がいる可能性があった。ただ、濃厚接触者の特定が26日の試合までに間に合わず、試合開催に必要な最低14人の登録メンバーを組むのが困難となったため中止された。
名古屋の発表によれば、まず宮原については感染までの直近2週間、練習以外は基本的に自宅で過ごし、外出は買い物など最低限にとどめていたが、それでも感染した。濃厚接触者者はいなかったという。渡邊とスタッフも、直近2週間の行動は宮原とほぼ同様で、濃厚接触者もいなかったことが試合中止決定後に発表された。
ホームタウンを構える愛知県は新型コロナウイルスの新規感染者数が急増。これまで最も多かった4月は1日20人前後だったが、7月21日以降は連日50人超。23日は97人の感染が分かっていた。ただ、愛知に限らず全国的に新規感染者数は増加傾向にある。今回のように、選手・スタッフの感染判明、試合中止はどのクラブにも起こり得る。名古屋グランパス自身6月上旬、トップチーム2選手の陽性が分かり、この1か月半は感染対策をより強化していたとみられる中での3人陽性だった。
「ただでさえ過密の今季...」
J1は2月の開幕戦直後に中断期間に入り、7月4日に再開。リーグ戦は例年どおり全34節を実施する予定で、約4か月の空白を埋めるため過密な日程を組まざるを得なくなった。毎週末の開催を基本としていた例年に比べ、今季のリーグ再開後は週末と水曜の中3~5日での日程が基本。それでも最終節は例年より2週間ほど遅い12月19日を予定している。名古屋-広島戦について、村井満Jリーグチェアマンは代替日程を組む意向を示しているが、追加の日程調整は容易ではない。
名古屋-広島戦の中止発表直後から、ツイッター上では、
「今季中はこんな感じが続くだろうな 名古屋は複数試合延期になったら後半戦もっと過密日程になりそう」
「ただでさえ過密の今季、今後の日程とかどうなるんだろうか、そして次の試合は出来るのだろうか、色々不安はあるけど、まず今は感染した人の回復を祈るばかりです」
「名古屋の事は、決して他人事ではない。いつ、どのクラブから感染者が出るか分からないという危機感は、常に持っていないといけない」
「名古屋の選手感染判明は、対岸の火事ではなくどのクラブにとっても戦々恐々だよ。全カテゴリー関係者合わせればNPBより断然多いファミリーなわけだし、感染拡大の影響は今後もどこかで出てくる可能性は高い」
とさらなる過密化を懸念する声があがっている。
故障リスク増への懸念も
また、日程が過密になれば疲労などもたまる。各チームがターンオーバー(先発メンバーの入れ替え)を敷いているが、そうなると戦力の確保がいっそう重要になるだけに、懸念されるのはケガ。負傷者が出ることは例年以上に大きな痛手となり得る。
日本サッカー協会(JFA)審判委員会が今季開幕前に示した「レフェリングスタンダード」では、これまでよりもコンタクトプレーによるファウルを取らない趣旨の方針が明かされている。球際での激しさが増していくことが予想されると同時に、インターネット上ではファンから、
「ファウル流していくのが世界基準だとしても見るとこ見てくれないと怪我だけ増えるぞコレ」
「コンタクトに耐えることを求めるよりしっかりファール取るべきちゃう? 怪我にも繋がる、ゲームも荒れる」
などと故障のリスク増を心配する声もある。
Jリーグは27日、日本野球機構(NPB)と専門家による新型コロナウイルス対策連絡会議を開いた。専門家からは、今回のように陽性判明後、試合までに濃厚接触者の特定が間に合わないことは今後も起こり得るとして、同様の事態が起きた際の試合開催について「マニュアルに記載してはどうか」などの提言がされている。未曾有の事態に見舞われたシーズンで、暗中模索のリーグ運営が続く。