なぜキリンは、「巣ごもり需要」でアサヒを逆転できたのか

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   新型コロナウイルスの影響でビール系飲料市場に異変が起きている。ビール大手4社の2020年1~6月(上半期)の販売量は前年同期に比べて1割減少したが、推定シェアはキリンビールがアサヒビールを11年ぶりに抜いて首位になった。

   飲食店の休業や営業時間の短縮でビールの販売が減って全体に落ち込み、他方で家庭の「巣ごもり消費」では節約志向で第3のビールが伸びた結果、アサヒが沈み、キリンが浮上した。

  • 巣ごもり需要で業界地図にも異変(イメージ)
    巣ごもり需要で業界地図にも異変(イメージ)
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業務用に強いアサヒは苦戦

   ビール大手4社が7月10日発表したビール系飲料(ビール、発泡酒、第3のビール)の上半期販売実績によると、全体の販売量に占めるシェアはビール38%(前年同期46%)に落ちた。これに対し、「第3」は49%(同41%)に伸び、2004年の登場以来、初めてビールを上回った。テレワーク(在宅勤務)の拡大など、居酒屋などのビール需要は激減し、「家飲み」が拡大したためだ。

   「第3」は350ミリリットル缶の価格で税込み127円程度とビールの218円程度より80円ほど安く、12本入りなら1000円、24本入りなら2000円近い差とあって、消費税増税などを受けた節約志向が強まる中、「第3」が売り上げを急速に伸ばした。

   こうした全体状況が、各社別のシェアに直結した。アサヒの主力といえば、ビール「スーパードライ」。これは業務用のシェアが高いため、新型コロナの直撃を受け、上半期は前年比26%減と大きく落ち込んだ。一方、キリンは「第3」の「本麒麟」は6月まで16カ月連続で販売を増やし、特に4月にリニューアルした効果で、同月だけで39%、6月は55%増やすなど、首位奪還の原動力になった。

   ビールのシェア争いはメディアに格好の話題を提供してきたが、実は今回から各新聞や雑誌の記事に「推定」「推計」の文字がつくようになった。アサヒが2020年から「販売数量」の開示を取りやめ、金額ベースの発表に切り替えたのだ。理由は「過剰なシェア争いをやめるため」(塩澤賢一社長)。消耗覚悟のシェア争いを続けて業界全体が衰退してしまわないよう、量の追求から脱却して利益重視に転換したい狙いだと、関係者は解説する。

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