政治的スタンスを明らかにせず投稿
米国の他の街でも、警官たちが膝をついて平和な抗議デモへの連帯を表したり、ともに手を取り行進したりする様子が、時にマスコミで報道されていた。それでも、警官とデモ隊の衝突、ネットで次から次へと流れてくる市民同士の銃撃や殴り合い、略奪や放火などの画像や動画、汚い言葉で罵り合う左派と右派の応酬に、私は気が滅入っていた。
フェイスブックの投稿を読み終えるとすぐに、投稿した大学生、コルビ・ワーゼッカ(21)にメッセージを送った。そしてその後、彼と2時間近く、いろいろな話をした。
コルビはこれまで、フェイスブックにはたまに投稿する程度で、今回も友達や地元の議員が読んでくれたらいいくらいに思っていたという。
「ノースダコタは石油はあるけど、人口も少ないし、ニューヨークなんかと違って、中西部の忘れられた場所なんだ。それなのに全米の注目を浴びたんだから、そりゃあ驚いたよ」
最新のデータによると、ファーゴは人口11万人。白人が85%を占めているの対し、黒人はわずか5%ほどだ。歴史的に共和党寄りの街で、2016年の大統領選挙ではトランプ氏が49.3%、ヒラリー・クリントン氏が38.8%の票を獲得した。
コルビは民主党支持者で、2018年に再選は果たせなかったが、同州選出のハイディ・ハイトキャンプ元上院議員のキャンペーンに関わったことがある。が、投稿した文章からは、彼の政治的スタンスはわからない。
民主党を支持するようになったのは、自らが育った環境のなかで、社会的な経済格差を感じたことと大きな関係があるという。
「今、この国は、民主主義の理想を広めていないし、世界的にも尊敬されていない。トランプ大統領は自分のやりたい放題で、「権力の抑制と均衡」(checks and balances)を保つことができず、三権分立(立法、司法、行政)が機能していない。バーニー・サンダースもジョー・バイデンも、トランプよりはましだ」と主張する。
米国が分断され、党派間で非難の応酬になっていることについて、コルビはこう語った。
「政治について話せば言い合いになり、そこに分断が起きるものだと、多くの人が思っている。でも、データを使い、お互いに冷静に議論できるはずだ。政治の中には、党派の違いに関わらず、アメリカ人として向き合うべきこともある」