2020年7月下旬、日本各地では終業式が行われ、多くの学校が夏休みに入った。しかし、それは同時に「ウィズコロナの夏休み」の始まりでもあった。
報道によれば、一斉休校の遅れを取り戻すべく夏休みの短縮を行う教育委員会は、全国の95%に達するという。また、夏休み中にも授業日を設ける公立学校が全国で相次いでいることも報じられた。
夏休みは大幅短縮、結果、影響は塾・予備校業界に波及
これら、コロナの爪痕がこれでもかと残る2020年の夏休みに対しては、ネット上で「夏休み短い。さみしい。つらい。かなしい」といったツイートが目立つなど、その短さを悲しむ声が続々と上がっているが、その一方で、「夏休み短いのに夏期講習ぎっしり詰まってんの辛いよな」と夏期講習に言及する声も上がっている。
夏期講習といえば、例年であれば塾・予備校業界の書き入れ時。しかし、2020年はコロナの影響を受けているところも少なくなく、予備校によっては大手であるにもかかわらず、夏期講習のアナウンスがいまだウェブサイト上に表示されていないところもあるほどだ。一方で、前述の声のような過密な夏期講習を嘆く声も上がっており、大手、中小を問わず各社の対応は割れている状況だ。
そこで、J-CASTニュース編集部は、首都圏の個人指導をメインとする小規模な学習塾で講師を務める、30代男性に取材を実施。業界の裏話も含め、コロナの流行でもたらされた塾・予備校の通常授業の変化、そして夏期講習の実施状況について話を聞いた。
稼働率が激減、消毒作業で減る講師の休憩
まず、2020年度の生徒の在籍状況を聞いてみた。男性が務める塾では、例年であれば少ない年であれば20人前後、多い年であれば35人前後が通年で在籍しているというが、今年に関しては、
「現在、在籍生徒の総数は25人で、コロナへの感染を恐れてか、例年で言えば少ない方寄りです。ちなみに、うちは高校受験部(中学生)と大学受験部(高校生のみ)をやっていますが、生徒数の比は今年も例年も3:2といったところです」
と、若干のコロナの影響が感じられると話してくれた。次に、通常授業を実施する上で、コロナ前とコロナ後の変化について聞いてみた。
「コロナ前は20畳ぐらいのワンフロアで、講師1人に対し、生徒2人という、1対2授業を同時に6組稼働させていましたが、室内の密集度を下げるべく、同時稼働は3組としました。また、座り方も変化しており、コロナ前は長机の真ん中に講師が座り、その両脇に生徒が座り、問題を解く生徒のノートを見ながらそれにツッコみつつ教えていました」
「絵が浮かぶように言うと、長方形の部屋の中に6個の長机が並んでいるんですが、長机の長辺を部屋の長辺に対して直角にして並べ、それぞれに講師1人と生徒2人が座っていたのです。これに対し、コロナ後は、長机3個を間引いてそのスペースにホワイトボードを置き、講師は長机とホワイトボードの間に立って、つまり、生徒と対面した状態で授業を行っています。結果的にではありますが、1度に教える人数は2人のままですが、授業の形式としては1対2授業ではなく、通常の塾で見られる複数授業(ホワイトボードや黒板の前に講師が立ち、対面して授業)と同じ形式になってしまっています」
また、単に密集状態を避ける以外の対策も取るようになったという。
「通常は講師・生徒ともにマスクをし、さらに、生徒が希望するときは使い捨てのフェイスガードを無料配布します。また、換気扇は常時回しているほか、授業1コマ(90分)のうち、45分経過後に10分間、及び、生徒の入れ替えも兼ねる休み時間(10分)にはフロアのドア1つと窓全てを開けて換気を行うようになりました。また、休み時間には換気の他にアルコールで机を消毒しなければならないので、講師の休憩時間が削られてしまうのが悩みの種です。ちなみに、コロナ後は同時に実施できる授業が半分になってしまったわけですが、休校中だった時に関しては、塾を朝から開けて何とか授業のコマ数をコロナ前と同じ数にすることが出来ていました。しかし、休校が終わった今、授業のコマ数は以前の半分に減少。ただ、夏期講習が始まれば、また、朝から塾を開けることが出来ます」
夏期講習は低調も、2学期からの通常授業に光明が...
次に、2020年の夏期講習の実施状況について聞いてみた。
「朝から塾を開けるとはいえ、机の数が半分に間引かれているので夏期講習の1日のコマ数は去年の夏期講習の半分。しかも、当塾が存在している自治体は夏休みが約2週間なので、普通にやっていたのでは机の稼働数はもちろん、期間の短さも相まって経営面でのダメージは相当なものです。なので、7、8、9月の3か月間にわたって、平日に加え休日に夏期講習の授業をねじ込むことで例年のコマ数を確保することにしました。圧縮した日程になってしまいますが、何とか乗り切るつもりです」
この講師の務める塾では、一時は休みが短いこともあり、夏期講習を行わないことも検討された。それを講師陣が説得して、なんとか開講にこぎつけたという。
「夏期講習の受講者数ですが、通年で入塾している生徒は全員参加するのですが、それと合わせても若干少ない状況です。ただ、明るい材料としては、4月からしばらく休校が続き、学校の授業がスムーズに行われなかったためか、2学期以降の通常授業から入塾したいとの相談は例年より多いのも事実。なので、これらの方々には2学期になったら是非とも入塾していただきたいと考えています」
最後に、地元の塾・予備校業界の状況についても聞いてみた。
「他の塾でも当塾と同規模かつ同形態のところの状況は似たようなもののようですが、ZOOMなどのアプリを使ったオンライン授業をやっているところもあるようです。また、夏期講習への参加人数もあまり振るってはいないようです。ただ、やはり、2学期からの入塾希望者は増えているようなので、そこが救いかと思います」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)