新型コロナウイルスの感染防止のため、日本の航空大手は優先搭乗を中止したり、機内で提供する飲み物などを簡略化したりするなどの対策を導入している。一部の利用者から「サービスダウンだ」といった意見もあるというが、それでも「安心・安全」を強調して、少しでも利用を取り戻したい事情がある。
「お待たせしました。『グループ1番』、後方窓側のお席のお客さまからご案内します」
「上級会員」は最後に搭乗案内 「お叱りいただいた」
2020年7月22日11時40分、東京・羽田空港。全日空(ANA)の千歳空港行きの便への搭乗を案内するアナウンスで、係員は最初にそう呼びかけた。「前後のお客様との距離を十分お取りください」とも語りかけると、乗客らは搭乗ゲートへの歩みを緩め、ゆっくりとボーディング・ブリッジへと進んでいった。
ANAは6月19日から、これまでのプレミアムクラスなど「上級会員」が優先的に搭乗していた方式を中止し、逆に後方窓側席から6つのグループに分けて案内する方式に変更した。前方の乗客が手荷物を荷物棚にしまう際に通路が滞り、続いて入ろうとする乗客が密集する状況を防ぐ狙いだ。東京大学の西成活裕教授(渋滞学)の研究室との共同研究で得られた知見をもとに導入したという。
「開始した当初は『サービスダウンだ』『手荷物を入れるスペースがなくなった』などと、(上級会員から)お叱りをいただきましたが、おおむね理解は得られていると思います」(ANA広報部)
ANAでは目的地への到着時、機外に乗客を案内する際も、混雑を避けるため、「前方、中央、後方の順に降りていただくよう、ご協力をお願いします」「感染拡大防止のため、前のお客様と適度な距離をあけて降りてください」などとアナウンスをしている。
この新しい搭乗方式を従来の上級会員からの優先搭乗に戻すことについては、まだ決めていないという。
一方、日本航空(JAL)は、搭乗の順番はこれまで通り上級会員を優先しているが、ボーディング・ブリッジや機内での混雑を避けるため、乗客を10~20人ごとに区切って案内する方式に6月から変更した。