2020年度の最低賃金が、事実上据え置かれることになった。7月22日、厚生労働省の中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)小委員会が、最低賃金について「全国平均の目安を示さない」ことを決めた。19年度の全国平均の901円に据え置く。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で経済活動の自粛でストップ。それによる景気低迷を受けて、「賃上げよりも雇用の維持」を主張する経営側に配慮した。
そうしたなか、ツイッターやネット掲示板には、「コロナじゃ仕方ない」と納得する声に混じり、「政治家は関係ないからな」「税金上げといて最賃引き上げはなしかよ」といった怨嗟の声もみられる。
最低賃金の引き上げは都道府県が判断する
「最低賃金」の引き上げ幅の目安をめぐる厚労省の中央最低賃金審議会小委員会の検討は、7月22日深夜に及んだ。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、景気が急激に悪化。業績悪化や倒産する会社が出ていることなどを理由に引き上げの「凍結」を主張する経営側と、「経済再生のためにも賃上げを維持すべき」と着実な引き上げを求める労働者側が激しく対立。議論は33時間を超す、異例の審議となった。
「最低賃金」は、雇用主(使用者、経営者)が労働者に支払い義務が生じる最低限の時給で、毎年1回、労使の代表と有識者(公益委員)で構成する審議会で目安を定める。これをもとに、各都道府県が8月下旬までに金額を決定する仕組みで、すべての働く人に適用される。
22日の小委員会は、「目安を示すことは困難で、現行の水準を維持することが適当」との結論を出した。
目安を示さなかったのはリーマン・ショックがあった2009年度以来11年ぶり。日本の最低賃金は国際的にみても低水準とされ、安倍政権は2016年度から19年度まで、デフレ脱却を旗印に4年連続で最低賃金を3%引き上げ。昨年度には、ようやく東京都が1013円、神奈川県が1011円と、1000円台に乗せた。
ただ、現在も最も低い青森、島根、高知、鹿児島など15県が790円(全国加重平均で901円)。政府目標の1000円に届いておらず、また東京都との差は223円と小さくない。そのため、今年度の最低賃金も地域の雇用情勢などを踏まえて、今後審議される各都道府県の判断に委ねた。
さらに、来年度以降の議論のベースになる公益委員の見解に、「さらなる引き上げを目指すことが社会的に求められている」ことを明記。コロナ禍の収束後には、最低賃金を引き上げるようクギを刺した。