最前部窓側と最後部窓側、「感染リスク低い」説も
日本の航空大手も、同様の見解だ。
「IATAが示した見解に基づき、また換気や消毒・除菌の徹底、マスク等の着用など感染防止策に取り組んでおり、(中央席を空席にしなくても)十分に感染リスクを減らすことができると考えています」(ANA広報部)
「感染拡大防止策の初動対応として、スピード感を持って対応できる策として実施しましたが、それ以降、様々な対策を講じることができたため、再開いたしました」(JAL広報部)
「従来より航空機内の換気は徹底していることもあり、利用客数が元に戻ってきていることを踏まえ、(コロナ前の状態に)戻したということです」(スカイマーク広報部)
実際、日本の航空大手も使用している米ボーイングや欧州エアバスの航空機では、病院の手術室の空調設備にも使用されている高性能微粒子(HEPA)フィルターを備えた換気システムを採用。2~3分おきに空気を循環し入れ替えている。
一方、米エモリー大学で2018年に発表された、航空機内でのインフルエンザの感染リスクに関する論文に興味深い記述がある。それによると、最前部の窓側席の乗客の感染リスクが最も低く、次に最後尾の窓側席が低いとしている。トラベルジャーナリストの橋賀秀紀さんが解説する。
「窓側席は通路を行き来する人からの距離が遠いので一貫してリスクが低く、特に最前部はファーストクラスやビジネスクラスになっていて通る人が少なく、感染リスクが低いと論文は結論づけています。また最後尾も、後方に座席が存在せず、後方の乗客から発せられた飛沫を浴びるリスクがないのです。一般的に後方座席は空席が多いので、その点でもリスクが低いと言えます」
この論文に対し、ANA広報部は次のようにコメントした。
「いくつかの意見や考え方があるようですが、一般的に機体メーカーであるボーイングやエアバスなどの技術的な見解の中には、そのような座席により差があるという情報は見当たりません」
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新型コロナウイルスの感染者が東京など都市部で再び増える中、人々の空の旅への意欲は低下したままだ。航空業界は安心・安全な空の旅の「新常態」を提示できるのか。最新事情を3回にわたってレポートする(次回は7月24日午前6時に配信します)。