中国、予想外の成長率に落とし穴 コロナ不安で「報復的貯蓄」に走る市民

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   中国・北京市は2020年7月20日午前零時から、新型コロナウイルスに対する警戒レベルを2級(市全体の警戒)から3級(区によって警戒するかどうかを決める)に引き下げた。連続14日間、北京市内から新規の患者が出なかったし、外から北京に入ってきた人からも新たに患者が出なかったからだ。

   ただ、筆者は7月21日午前零時すぎにトランクを引いて地方から北京に戻り、自分の団地に入ろうとしたら、知り合いの守衛に止められて、出張先、アパートの部屋番号、携帯番号、身分証明書番号、肉親の携帯番号などを再度全部記録してからやっと自宅に戻ることができた。警戒レベルが3級に下げられても、北京ではコロナウイルスに対する警戒は少しも緩んでいないと感じる。

   一方、企業の事業再開は北京だけでなく、出張先の広東省も湖南省もどこも普段と変わらないが、マスコミが煽っている「報復的消費」、日本でいう「リベンジ消費」はあまり見えず、コロナの脅威にまだおびえる中国市民は、むしろ「報復的貯蓄」に向かっているようだ。

  • 「中国の秋葉原」ともいわれる深センの「華強北電子街」。日曜日でも道行く人は少なく、かつての活気はない(2020年7月19日、筆者撮影)
    「中国の秋葉原」ともいわれる深センの「華強北電子街」。日曜日でも道行く人は少なく、かつての活気はない(2020年7月19日、筆者撮影)
  • 「中国の秋葉原」ともいわれる深センの「華強北電子街」。日曜日でも道行く人は少なく、かつての活気はない(2020年7月19日、筆者撮影)

貿易とインフラ投資でプラス成長に

   北京が新型コロナへの警戒レベルを引き下げる前の7月16日、中国は経済の強靭さを見せつけた。

   この日、国家統計局が発表したデータによると、第2四半期の中国のGDPはマイナスからプラスに転じ、前年同期比3.2%増、コロナの影響が大きかった第1四半期期比では11.5%増と予想を超える好転をみせた。

   こうした中国の経済成長は、対外貿易の貢献が大きい。ドル建ての6月の輸出入はともにプラス成長となり、以前に各方面が出したどちらも落ちるという予想を大きく超えた。人民元建てでも、第2四半期の輸出は前年同期比4.5%増で、前期比で31.3%増となっている。  日本の輸出入関連のデータを見ても、6月の対米輸出は前年同月比で46.6%減、EU向けが同28.4%減の中、中国向けは同0.2%減だけだった。中国との貿易はほとんど無傷だったことがわかる。

   さらに、中国政府は5GやIoTなどの新インフラへ今後10兆元の投資をする予定で、投資で経済を引っ張っていく国策はリーマンショックのときとはほとんど変わらない。2020年下半期の経済回復の速度はさらに早まるのではないかと予測される。

期待した「リベンジ消費」が起きない

   しかし、投資と貿易だけで中国経済を発展させることは難しい。現在、中国は「国内国外経済双循環」という新戦略を作り、長期的構想に基づき、中国経済を輸出志向型から内需指向型へと転換させ、特に国内消費に経済を牽引させようとしている。

   にもかかわらず、コロナウイルスの影響が続く中、「中国の住民所得は強い消費能力を支えるには不足している」という事実がより際立って示された。統計局の各経済データの中で消費は足をひっぱる項目となっていて、さらには第2四半期の消費回復速度も遅れている。

   日用品の消費は2桁成長をみせているものの、自動車・建築内装、家電、外食などの分野ではいまだ2桁のマイナス成長となっている。このため、今年の経済回復を中国人の消費力に頼るというのは、あまり現実的ではない。

   経済雑誌『財経』は、7月18日にこのような記事を掲載した。

「2020年の上半期にコロナウイルスの感染拡大を食い止めてから、報復的消費が期待されたが、いまだにやってこなくて、報復的貯蓄だけはたえずに高まっている」

   実際、筆者の知り合いの若い記者たちは、ひごろあまり貯蓄せず、毎月ほぼ稼いだ金を全部使い果たしていた。しかし、コロナショックがやってきてから、取材の仕事は再開されても残業は減らされ、不景気をはじめて感じ、ほとんどの人が貯蓄の重要性を認識して、少しは貯蓄するようになっている。

   中央銀行である中国人民銀行が公表したデータによると、5月からすでに貯蓄の増加は目立つようになっている。

「5月の貯蓄残高は2.31兆元増であり、昨年同月比では1.09兆元増であった」

   コロナによる経済の先行き不安定のため、肝心の国内消費はなかなか盛り上がらない構図だ。「報復的貯蓄」は中国経済の安定成長を阻む要因にならないか、注目すべきであろう。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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