日産自動車がリーフに続く新型の電気自動車(EV)「アリア」を発表した。アリアは今後、電動化を進める日産の中核となるモデルで、日産のEVは当面、リーフとアリアの2枚看板となる。
従来のリーフが5ドアハッチバックのセダンであるのに対し、新型のアリアはセダンとSUV(多目的スポーツ車)の中間に位置する「クロスオーバー」と呼ばれるモデルだ。トヨタの現行車でいえば、ハリアーやC-HRなどがクロスオーバーに当たる。最近のSUVは本格オフロード4WDよりセダンやワゴンに近いクロスオーバーが人気カテゴリーで、世界的にも激戦区となっている。
「加速はフェアレディZに匹敵する」
日産にはエクストレイル、キックスという二つのSUVがあるが、国内で販売する現行モデルに本格的なクロスオーバーはなかった。このため日産は今回のアリアを「新型クロスオーバーEV」と説明している。
注目ポイントは、従来のEV専用モデル、リーフとの違いだ。ひとことで言えば、リーフがファミリーカーであるのに対し、アリアはクロスオーバーながらも動力性能はSUVを通り越し、スポーツカーに近いことだろう。
まずリーフが前輪駆動のFFであるのに対して、アリアはFFのほか、4輪駆動(AWD)モデルがある。前後にモーターを搭載し、4輪を制御するEVの独自技術を日産は今回、「e-4ORCE」(イーフォース)と名付け、「二つのモーターを緻密に制御することで、意のままの走りとスポーツカーに匹敵する加速性能を実現する」と説明している。
アリアはバッテリーの容量はもちろん、モーターの最高出力、最大トルクともリーフを上回っている。
バッテリーはリーフe+の62kWhに対して、アリアは65kWhと90kWhの二つがある。90kWhのバッテリーを搭載するAWDモデルの最高出力は290kW、最大トルクは600Nmで、リーフe+の160kW、340Nmを大きく上回る。
航続距離(WLTCモード)はリーフe+の458キロに対して、アリアは90KwhのFFで610キロ、90kWhのAWDで580キロとなっている。バッテリー容量がリーフe+に近い65kWhのFFは450キロで、ほぼリーフと同じだ。
車体がリーフよりひと回り大きいアリアは、車両重量もリーフe+の1670キロに対して1900~2200キロと重いが、航続距離はバッテリーの容量に比例するようだ。
今回、日産はアリアの最高速度と加速性能を公表した。最も速い90kWhバッテリーのAWDモデルの最高速度は時速200キロ、0→100キロ加速は5.1秒という。アリア発表の記者会見で内田誠社長は「アリアの加速はフェアレディZに匹敵する。私も実際に運転して驚いた」と述べた。
最大のライバルは...
さらなる注目ポイントは、日産が今回、アリア専用のプラットフォームを新開発したことだ。今後、日産が開発するEVはもちろん、eパワーなどハイブリッドの電動車も、このプラットフォームがベースになるという。
このほかアリアは日産が得意とする運転支援技術「プロパイロット2.0」など、同社が「技術の日産」と誇る先進技術を搭載する。
クロスオーバー市場は世界的にも激戦区となっている。そこに日産はEV専用のアリアで挑むことになる。日本での発売は2021年中ごろで、同年末までに欧州、北米、中国でも発売するという。販売価格は約500万円となる見込みだ。
海外に目を転じると、EVの最大のライバル、米テスラは普及版のセダン「モデル3」に続き、今回のアリアに近いクロスオーバーのSUV「モデルY」を投入した。北米や中国を中心にアリアがモデルYのライバルとなるのは間違いない。
内田社長が「日産の歴史の中で新たな扉を開くモデルの一つ」と力を込めるアリアが、世界市場でどんな評価を受けるのか。近未来の日産を占う1台となるだけに、今後の行方に注目したい。