「巣ごもり需要」が期待されるスカパーJSATホールディングス(HD)の株価が伸び悩んでいる。
2021年3月期は減益との業績予想を発表した翌日には、一時9%安と売り込まれ、その後も冴えない動きが続いている。プロ野球の開幕延期による視聴料収入の減少のほか、動画配信サービスの米ネットフリックスなどとの競争が影響する。
コロナショックから立ち直ってきたと思ったら
6月25日発表の業績予想の内容を確認しておくと、売上高にあたる営業収益は前期比微増(0.3%増)の1400億円。その前提となる有料放送「スカパー!」の「累計加入件数(期末の総数)」は前期比2.6%減の308万件となる見通しだ。営業利益は21.4%減の120億円、純利益は33.5%減の80億円を見込む。
スカパーJSATは予想の背景として「既存の有料放送市場が成熟し、定額制や無料の動画配信サービスとの顧客獲得競争やスポーツを中心としたコンテンツの獲得競争が激化している」と指摘している。
「コンテンツ獲得競争」とは、スカパーJSATの「4番打者」であるプロ野球12球団公式戦の生中継を虎視眈々と狙う勢力があるため、来季以降の生中継を継続できたとしても権利関係の料金に上昇圧力がかかっていることを言いたいようだ。さらに、「新型コロナウイルス感染拡大の影響により、各種スポーツの開幕延期、音楽ライブの中止・延期」があったことも収益を下押しするという。つまり、構造的、一時的双方の要因がからむわけだ。
また、スカパーJSATは「宇宙事業」として、人工衛星から航空機に提供する通信事業などを展開している。売上高ベースで「スカパー!」などの「メディア事業」の半分程度に及ぶが、コロナによる減便で「衛星回線の利用に大きな影響が出る」と見込んでいる。
減益の業績予想は株式市場で失望売りを招いた。発表翌日、6月26日に株価は一時、前日終値比9.0%(38円)安の386円まで下落、約2カ月ぶりの安値をつけた。「巣ごもり」の恩恵を受ける銘柄との見方もあり、3月のコロナショックによる下落から比較的順調に株価が回復していた中、失望は大きかったようだ。
ネットフリックスにはすでに抜かれた?
確かに、スカパーJSATにとって動画配信サービスは脅威となっている。2015年に日本に参入したネットフリックスは国内利用者数を公表していないが、2019年夏にヒット作「全裸監督」が独占配信された後、同年中に利用者は300万人の大台に乗せたとされる。年明け以降の韓国ドラマ「愛の不時着」の浸透を思えば、スカパーJSAT(6月末で315万件)を抜き去っていても不思議ではない。
サッカー・Jリーグと独占配信契約を結んでいる英DAZNグループの「DAZN」も手ごわい。6月11日にはウォルト・ディズニー・ジャパンによる月額700円(税抜き)と割安な「ディズニー+(プラス)」も始まった。4、5月と加入件数が純減した後、プロ野球開幕を受けて6月に純増に転じたスカパーJSATだが、激しい競争環境に直面しているのは間違いない。
野村証券が7月1日に配信したリポートで「3機の大型新規衛星の寄与で宇宙事業が中期的に利益成長を確保するとの見方に変更はない」として、投資判断「Buy(買い)」(3段階の最上位)を継続するなど悲観論一色というわけではなく、株価もじわじわと戻してきてはいるものの、当面、上値は重いと見る向きが多い。