日本でのeスポーツ元年と呼ばれた2018年を境に国内では多くのeスポーツ選手が誕生し、チームが結成され、そしてすでに多数のチームが解散を余儀なくされている。
eスポーツは「狩場」でなく「畑」
解散の理由は複数存在しているが、最も多いと思われるのが資金面での問題だ。eスポーツでお金を稼ぐ手段としては大会の賞金やイベント出演のギャラ、配信による収入などがある。しかしながら大会で賞金を稼げる選手やイベント出演の声がかかる選手、配信である程度の収入を得られる選手は限られている。
それでいて国内外への遠征や選手の生活保障、必要な機材の調達にはお金がかかる。初期に用意した資金があっさり無くなり、解散を決めたチームは多い。上手く資金調達に成功したチームでも、運営者の放漫経営の末にチーム運営が出来なくなった事例も散見される。大金を前に己を律するのはとても難しいのだ。
また、「今、eスポーツっていうのが盛り上がっているらしい」と小耳にはさんだ小金持ちがチームを結成し、実際に運営してみたところまったく儲からないのですぐに解散を決めたという話を筆者は数例耳にしている。
個人としてはともかく、組織としての確実な収益源を未だ確立しづらいeスポーツで安定した利益を得るには腰を据えて自ら畑を開拓し、新たな価値を創造していく必要がある。eスポーツは狩場ではなく畑であることを肝に銘じておかねば、ただ時間と資金を無駄にするだけなのだろう。
解散が避けられないのであれば...
資金と情熱ある運営者、人脈その他の条件に恵まれた場合でも、上手く行くとは限らない。
ある世界規模のリーグ戦を行っていたタイトルでは、リーグ戦縮小のためにチーム数を減らすことになり、情熱と実力ある若い選手たちが突然チーム解散の憂き目にあっている。
特にeスポーツはフィジカルスポーツと比較するとタイトルの寿命が短く、ゲーム性もそれぞれ異なるため、プレイスタイルが似ているタイプの一部のゲームを除けば、別タイトルへの移籍も難しい。人気が落ちたタイトルはチームを解散し、新たな人気作品で新チームを構成するという新陳代謝がしばしば行われることも、チーム解散が避けられない大きな要因となっている。
結局のところ、eスポーツの世界において、チーム解散は避けられない運命にある。必要なのは、そこを織り込んだ仕組みづくりだ。プロゲーマーとして実績を挙げた人間がコーチとなる流れ、ストリーマーとなる流れ、チーム運営者・大会運営者となる流れなど、プロゲーマーを辞めざるをえなかった選手たちが、次の世界へすぐに歩み出せるようにする必要がある。
すなわち教育だ。
自力で歩み出せる人間も大勢いるが、そうではない人間も確実に存在している。例えばプロライセンスを持つ選手がeスポーツ運営について学びたいと考えた場合、助成が受けられる仕組みの用意など、eスポーツを愛し盛り立てていきたいと考えている人間が出来ることは、無数に存在しているのではないだろうか。
(eスポーツライター 早川清一朗)