NGT48が2020年1月に都内で開いたコンサートでは、合宿の特訓で選抜された16人のメンバーがパフォーマンスを披露した。NGT48にとって1年9か月ぶりの新曲「シャーベットピンク」(20年7月22日発売)では、この「コンサート選抜」のメンバーがカップリング曲を担当した。タイトルは「絶望の後で」。グループの境遇と重ねて受け止めるファンも多く、タイトル発表後には波紋も広がった。
メンバーは「絶望の後」に何を見るのか。インタビュー後半では、表題曲とカップリング曲、それぞれのセンターを務める藤崎未夢(みゆ)さん(19)と本間日陽(ひなた)さん(20)に、楽曲に込められた思いや、今後の活動の展望について聞いた。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 工藤博司)
絶望すれば楽だけど、でもそこで諦めなかった
―― カップリング曲は、コンサート選抜の16人が担当し、本間さんがセンターです。タイトルは「絶望の後で」。タイトルの発表直後からファンの間で波紋が広がりました。歌詞には
「ああ真実とは? 誰も開けちゃいけないパンドラの箱か ああああ知りたくなんてなかったよ 正義はどこにある?」
ともあります。表題曲の「シャーベットピンク」は、その背景を比較的理解しやすいように思いますが、この「絶望の後で」は、どのような楽曲だと受け止めてフォーマンスしていますか。
本間: タイトルや歌詞のメッセージ性が強い分、ファンの方はタイトルが発表されたときに「どんな曲なんだろう」と思われた方が多いと思います。私も最初この曲をいただいて、どういう風に表現したらいいのかな、どういう風に自分の中で解釈したらいいのかな、と結構迷った部分はあります。でも曲を聴いて歌って録っていく中で思ったのは、ここまで自分がアイドルとして活動してきて、5年間活動してきていろんなことがあったりしたけど、アイドルになって本当に全部どの瞬間も楽しいことがたくさんあったな、ということと、歌詞にもあるように「どうして 優しげに微笑んで近づく?」とか「今すぐ 絶望すれば楽になれるさ」とか...。絶望すれば楽だけど、でもそこで諦めなかった。諦めなかったというか、諦めるタイミングは、多分アイドル活動やってきてたくさんあったんですよ。挫折して、もうそこで諦めちゃう瞬間、諦めてしまえば楽になれる瞬間ってきっとたくさんあったと思いますが、それでも自分が今こうやってアイドルをやっているというのは、やっぱりファンの方の応援があったからだし、周りで支えてくれる方々がいてくれたからこそです。そういった方々のことを、すごく思い浮かべました。
―― 難しい局面でもどんな時でも、反転攻勢のきっかけはつかめる、といった思いですか?
本間: そうですね。でも、逆転のチャンスとかそういった意味ではなくて、自分が今活動できているのは、周りの方々がいてくださるからこそだし、NGT48として活動してきて、どの瞬間も私は好きだと思いました。
―― タイトルや歌詞が与える印象とは反対に、曲調は比較的前向きですよね。
本間: はい。雄大な感じで、すごく好きです。
檻に閉じ込められた中から外に出たい、高い所にあるものを掴みたい、といった感情
―― MVについてうかがいます。二王子岳(にのうじだけ=新潟県新発田市)の登山にチャレンジしました。
本間: 登って下山するまで合計9時間ぐらいかかりました。
―― ハイキング程度ではなく、険しい道をよじ登ったりと、本当に「登山」でした。
本間:そうなんですよ!私もびっくりしたんですけど(笑)1000メートル越えの山は初めて登ったので結構きつかったです。
藤崎:(笑)
―― 前半は登山する本間さんの険しい表情が映って、中盤には山頂の鐘を鳴らすシーンがあります。何かを象徴しているんですか?
本間: 山頂に「青春の鐘」があって、それを目指す構成でした。
―― MVのダンスシーンでは、前半は「振り」がなく、皆さん神妙な表情をしていらっしゃる。鐘を鳴らすシーン以降の後半部分では一転、激しめのダンスを展開します。
本間: 前半は自分の中で歌詞を理解する時間、自分のものにする時間です。少しずつ自分の気持ちが歌詞になって言葉になっていって、みんなの想いも動きになって大きくなって、ラストにその気持ちが爆発する、という流れになっています。
藤崎: ダンスシーンはMVの最後のところだけですが、その振り付けの中には感情をすごく乗せた振り付けが多かったです。例えば、檻に閉じ込められた中から外に出たい、高い所にあるものを掴みたい、といった感情です。振り付けには、歌詞の意味や感情を込めたものが多かったので、それを表現するのがすごく難しかったです。最後のダンスシーンはみんなの感情が一つになって、その大きい感情が振り付けとして一体感が生まれたシーンになったのではないかと思います。
チーム制廃止で「虚無感というか、一気に崩れ落ちちゃうような...」
―― 先ほど、楽曲のタイトル「絶望の後で」をめぐってファンの皆さんに波紋が広がった、という話をしました。本間さんは「テレビブロス」の7月1日付けのインタビューで、「『絶望』を感じるような時」として、「NGT48からチーム制がなくなったこと」を挙げていました。本間さんがキャプテンを務めていたチームGの千秋楽公演(19年4月21日)は、非常にメンバーの皆さんもおつらいだろうな、と思いながら配信を拝見していました。当時は食欲もなくなってしまったほどだと答えておられましたが、そういった厳しい状態から気持ちをどのように整理して、今のような再出発につなげたのか聞かせてください。
本間: チームGというチームが昔あって、私はそこのキャプテンをやらせてもらっていました。1期生のメンバーだけで新しいチームを1から作り上げられるチームは、多分これが最初で最後だろうと思っていて、同期だからこそ皆で意見をぶつけ合ってチームを築き上げる楽しさや難しさといった新しい経験が、自分にとってやりがいを感じていました。(チーム制が)なくなってしまうことが決まった時は、虚無感というか、一気に崩れ落ちちゃうような...。1年間はチームGのために活動してきたようなもので、そのチームGにかける時間がすごく長かったので、その分、何もなくなっちゃったような気持がすごく大きくて...。でも、チーム制がなくなってから今のNGT48の形に変わるときは、キャプテンとして活動することについては、そこで1回自分の中できちんと区切りをつけたので、そことは全く別の感情です。
―― あとはNGT48を支える1メンバーとして活動していきたい、ということですね。
本間: そうですね、はい。
―― 藤崎さんのような「強い」後輩や、2期生も多く活躍しています。そういった皆さんも指導しつつ、メンバーとしても頑張りたい、と。
本間: はい、そうですね。やっぱり、後輩が早く(成長してほしい)。でも、今ももう皆しっかりしているし、面白い子もたくさんいるので、もっとNGT48の良い一面に、良い味になってくれればいいと思います。
AKB48選抜で「必要以上に背負うのは、もうやめました」
―― 本間さんは20年1月に初のソロコンサートを開いたほか、最近のAKB48のシングル曲やAKB48が出演する歌番組にNGT48から唯一のメンバーとして参加するなど、NGT48メンバーとして以外の活動も多い1年でした。NGT48の活動とAKB48の活動とでは、勝手は違いますか。
本間: そうですね。全然違いますね。やっぱりAKB48だと先輩方が多くいらっしゃるので、先輩から学ぶこともたくさんありますし、それを少しでも持ち帰ってNGT48の良いところに足していけたらいいと思っています。
―― 逆にAKB48の先輩の皆さんに対して「NGTってこんなんだよ」といったアピールをしたり、NGT48を代表しているような感じはありますか?
本間: アピールはあんまないかもです。「サステナブル」のときはそれ(NGT48を代表すること)で結構プレッシャーを感じることが多くて、でもそれやめました(笑)。結構プレッシャーや責任感を感じて苦しくなっちゃうときがあるので...。もちろんNGT48の代表として出演させていただく部分というのも、もちろんわかりますし、そういう自覚をもってステージに立つことが多かったのですが、実際に(ステージやカメラの前に)立つときは、もちろん「背負った部分」もあるのですが、自分がステージを楽しもう、この機会を存分に楽しもう、という気持ちを優先させることの方が多くなりました。その方が伸び伸びと1アイドルとしてやれる気がして、必要以上に背負うのは、もうやめました。
―― どちらかといえば、そちらの方がパフォーマンスも良くなるわけですね。
本間: はい、そうです。
新会社発足で新しい取り組み「すんなりと始めやすかったんじゃないかなあ」
―― 20年3月にはNGT48の運営会社がAKS(現・ヴァーナロッサム)から独立し、新年度から新体制が本格的にスタートしました。直接メンバーの皆さんと接するスタッフの皆さんの顔ぶれはあまり変わっていないとのことですが、日々の活動で変化を感じることはありますか。
本間: 特にはありませんが、「こういうのに挑戦してみたい」といったことは、結構相談するようになりました。4月には研究生の「TikTok(ティックトック)」アカウントがスタートしましたが、そういうところですんなりと始めやすかったんじゃないかなあ。
―― NGT48の運営会社「フローラ」の親会社「スプルート」はHKT48の親会社でもあります。握手会の代わりに開かれる「オンライン個別おしゃべり会」では同じLINE社のシステムを使うなど共通点もあり(編注:HKT48は「オンライン握手会」と呼称)、今後一緒に活動をする機会も増えるかも知れません。HKT48とは、古くは「さしきた合戦」(日本テレビ、16年)で共演した間柄でもあり、本間さんは19年11月に、博多座(福岡市博多区)で行われたAKB48グループの公演のために福岡市に長期滞在したこともあります。お二人から見て、HKT48はどんな印象のグループですか。
本間: 私は元々HKT48がすごく好きで、加入する前から宮脇(咲良)さん(22=IZ*ONE専任活動中)が憧れの先輩です。そういった感じで「さしきた合戦」といった番組に出演させていただくこともあって、結構HKT48には仲のいいメンバーも多いです。自分のグループ以外でお話しするメンバーが多いグループなので、(新潟と福岡で)距離はありますが、いろんなことを一緒にやっていけたら個人的にもうれしいです。
―― 20年1月のソロコンサートには、HKT48の豊永阿紀さん(20)がゲスト出演していました。SNSにはお互いの写真が載ったりしていますが、結構仲が良いのですか。
本間: はい、阿紀ちゃん来てくれました。20歳の誕生日は博多座の舞台期間中に迎えましたが、その日は阿紀ちゃんのお家に(遊びに)行きました。
―― 藤崎さんはいかがですか。
藤崎: そうですね。私はドラフト3期生なので、HKT48を含めて各グループに同期がいます。
本間: 渡部愛加里ちゃん(15)とか。
藤崎: ドラフト生として一緒に練習していたメンバーなので、個人的に仲良くさせて頂いているメンバーもいます。私も加入前からHKT48がすごく好きでした。3期生の同期以外はあまり関わりがありませんが、これから一緒にお仕事させていただけたらと思います。
―― 「オンライン個別おしゃべり会」では、久々にファンの皆さんと「会う」ことになります。形式は大きく変わりますが、どんなことを話したいですか?
本間: 仕様は変わってきますが、1人1人お話できるということには変わりないと思います。直接会えないという寂しい点はあるかも知れませんが、こういう風にイベントとして1対1でファンの方と直接お話しして意見を交わせる場所はすごく大切だと思います。こういったイベントを開催できるのはすごくありがたいと思います。
新潟にすごくお世話になっている部分がたくさんある
―― NGT48は発足時から「地域密着」を掲げており、県内津々浦々をめぐって見どころを紹介する「にいがったフレンド!」(テレビ新潟、17~19年)は地域の皆さんとの交流も特徴で、高視聴率を誇りました。1年9か月ぶりの新曲を機に、最近は行政からも前向きな発言が増えつつあります。先日退任されましたが、新潟県の益田浩副知事はNGT48のファンだそうです。6月のにいがた経済新聞社のインタビューで
「花角英世知事もNGT48は新潟県の財産だと言っている。全国に6つしかいないグループが札幌や仙台、金沢にもなく、新潟にあることはすごいことだ」
などと話した上で、今後についても
「現在は支配人や経営者も交代しており、今度新しくCDも出すので期待している」
と話していました。さらに、本間さんの地元、村上市の高橋邦芳市長は7月6日、益田副知事に村上市に来てもらったことをツイートする中で、
「本省にお戻りになられてからも我が日本国の道標としてご活躍ください。併せて...NGT48...そして本間日陽よろしくお願いいたしますm(_ _)m」
と、本間さんにも触れています。新潟県や新潟市出身者として、今後地域に対してどのようなアピールや貢献ができそうですか。意気込みがあれば聞かせてください。
藤崎: 今回のMVも新潟県の様々な所で撮影させていただいたので、そういう意味では新潟県のいいところも県外に発信するという面もありますが、新潟県にあるグループとして撮影もさせて頂いているということで、新潟にすごくお世話になっている部分がたくさんあると思います。このシングルを通してだけではなく、NGT48としてこれから新潟の皆さんにたくさんのことをできたらいいと思っています。
本間: 私は新潟県で生まれ育って、新潟県に48グループができたからこそNGT48に加入したいと思ったので、新潟だからこそできる活動の形が絶対にあると思います。新潟県は広いですから、上越・中越・下越と、いろいろな魅力が各地であります。NGT48には県内各地出身のメンバーがいるので、そういった魅力を県外にも、そして県内の皆様にも楽しんでもらえるように発信していけたらいいと思います。
―― 7月10日のLINE LIVEの番組では、今後の目標として、朱鷺メッセ(新潟市中央区)でのコンサートを挙げる人が多くいました(編注:18年に卒業した北原里英さん(29)の卒業コンサートの会場だった)。新型コロナウイルスの影響で劇場公演が再開できない状況が続いていますが、それが落ち着いたらまずは劇場で、それから大きな会場を目指す、いったところでしょうか。
本間: はい。また、朱鷺メッセに今のメンバーで立てるように頑張っていきたいです。
藤崎未夢さん プロフィール
ふじさき・みゆ 2000年生まれ、新潟県新潟市出身。18年に行われた第3回ドラフト会議でNGT48に加入。18年の選抜総選挙では圏外だった。今作品「シャーベットピンク」で初選抜、初センター。趣味はキャンプで、20年6月にキャンプ・アウトドア情報メディア「hinata」で連載を始めた。
本間日陽さん プロフィール
ほんま・ひなた 1999年生まれ、新潟県村上市出身。2015年にNGT48に1期生として加入。18年7月から19年4月まで「チームG」キャプテン。今作品「シャーベットピンク」を含め、NGT48のシングル表題曲全5曲で選抜メンバーに選ばれ、3枚目シングル「春はどこから来るのか?」(18年発売)でセンター。「#好きなんだ」(17年発売)をはじめ、AKB48のシングル表題曲は計4作品に参加。17年、18年の選抜総選挙ではそれぞれ13位、16位にランクインし、いずれも上位16人の「選抜」入りした。