大戸屋VSコロワイドが過熱化 外食産業の地盤変化が背景に

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   「大戸屋ごはん処」をチェーン展開する大戸屋ホールディングス(HD)に対して、約19%の株式を持つ外食大手コロワイドが株式の公開買い付け(TOB)を開始した。約51%の株式の取得を目指しており、成功すればコロワイドが大戸屋HDの経営権を握る。筆頭株主ではあるものの両社の関係は険悪で、2020年6月に開かれた大戸屋HDの定時株主総会ではコロワイドの要求した取締役入れ替えが否決されたばかり。なぜ、関係がこじれているのか。

   きっかけとなったのは2015年、大戸屋HDを一代で外食チェーンに育て上げた三森久実氏の死去だった。会長となり、死去の1年前に肺がんの告知を受けていた久実氏は、長男の智仁氏に経営を継がせようと急ピッチで昇進させていたが、窪田健一社長らの不満が高まり、久実氏の死去で窪田社長派と久実氏遺族との対立が表面化した。結局、智仁氏が16年に取締役を退任して大戸屋HDを去る一方、会社は17年に久実氏の功労金として2億円を支払うことで歩み寄ったようにも見えていた。

  • 大戸屋HDの動向に注目が集まる(大戸屋公式サイトより)
    大戸屋HDの動向に注目が集まる(大戸屋公式サイトより)
  • 大戸屋HDの動向に注目が集まる(大戸屋公式サイトより)

「次の手」として敵対的TOB

   ところが2019年10月、久実氏から株式を相続して筆頭株主になっていた妻三枝子氏が発行済み株式の約13%をコロワイドに売却し、第2位株主だった智仁氏も約5%を同様にコロワイドに売却した。「コロワイドへの売却は相続税対策だった」との見方もあるが、居酒屋「甘太郎」で事業を興したコロワイドが回転寿司「かっぱ寿司」、焼き肉店「牛角」の運営会社などを次々と買収して規模を拡大してきたことを知らぬ者は外食業界にはいない。コロワイドへの株式売却は、主導権争いに敗れた意趣返しとみる向きもある。

   コロワイドは大戸屋HDに対して、提携強化や子会社化を提案したが、大戸屋HD側は経営の独立性を主張して決裂。とりわけ、複数の店舗の食材を1カ所で大量に加工する仕組みである「セントラルキッチン」を活用するよう、コロワイドは提案したが、各店舗での調理を原則としてきた大戸屋HDは首を縦に振らず、外食経営の根本となる考え方でも両社の違いは明白だ。

   業を煮やしたコロワイドは、2020年6月の大戸屋HD定時株主総会に向けた株主提案として、智仁氏を含む過半数の取締役の人事案を要求したが、個人株主の反対が強く否決。そこでコロワイドが次の手として打ったのが、最大約70億円を投じる敵対的なTOBだった。逆の見方をすると、そこまでして大戸屋HDの主導権を握りたいコロワイドにも事情がある。新型コロナウイルスの感染拡大で外食産業全体に地盤変化が起きているからだ。

個人株主の動向が焦点

   コロワイドの主力業態である居酒屋は、新型コロナの感染拡大期には臨時休業を余儀なくされ、さらにテレワークや「3密」を避ける生活様式の定着によって採算が見込めないと判断した約200店舗の閉鎖を決めた。そこで、新たな業態として定食チェーンを傘下に入れて、経営をてこ入れしながら「大戸屋」のブランドを介護施設などに提供する給食事業にも活用できれば、相乗効果を発揮できると見込んでいるのだ。

   ただ、コロワイドの経営陣が傘下に入れた企業に対する強引な手法は業界に知れ渡っており、大戸屋HD側には反発が根強い。TOBの成否には約6割を占める個人株主の動向が焦点となり、株主への配慮からTOBが成立しても大戸屋HDの上場は維持する意向だ。株価に4割以上のプレミアムを上乗せして買い付ける資本の論理が勝つか、「大戸屋ファン」の個人株主から支持を集められるか。TOBの期間は2020年8月25日まで。

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