医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)が一部の地域で、一部美白化粧品の販売を中止した。これを受けて、日本含むアジア系を名乗るアカウントからは疑問の声もあがった。
ニューヨーク・タイムズ(ウェブ版。6月19日公開、25日に更新)が掲載したJ&Jのコメントによると、販売を中止した商品の宣伝には「素肌の色よりも白い方がいい(fairness or white as better than your own unique skin tone)」という文言を用いていたという。
これを受けて、日本含むアジア系を名乗るアカウントからは疑問の声もあがった。J-CASTニュースは、美白商品の販売中止を行ったJ&Jにその経緯や国内での対応について尋ねた。さらに、国内大手化粧品メーカーに各化粧品メーカーの考える「美白」についての見解を聞いた。
「商品ラインアップを戦略的に整えるため」
黒人男性が白人警察に首を抑えられ死亡した事件を発端に、世界各地で人種差別への抗議運動が広がっている。そんな中J&Jが、アジアと中東で販売されているNeutrogena(ニュートロジーナ)ブランドの「Fine Fairness」と、インドで販売されているClean&Clearブランドの「Clear Fairness」のシミ消しクリームの販売を中止した。「白い肌を推奨している」との批判が出ていたためである。
上記のニューヨーク・タイムズ記事によれば、該当商品はダークスポットリデューサー(しみ消し)として宣伝されてきたが、一部の購入者が肌のトーンを明るくするために使用していたという。さらに同紙によれば、アジアでは、「Fine Fairness」を宣伝するコマーシャルで、「より完全に白くする」ことができる方法を説明しているという。
J-CASTニュースは、J&Jに、美白化粧品のアジアや中東での販売を取りやめた経緯について尋ねた。J&Jグローバルはこう回答する。
「対象商品の中止は弊社の商品ラインアップを戦略的に整えるために決断しました。 また、成長が見込まれるマーケットやカテゴリーに注力し、お客様の生活をより豊かにするために常に商品ラインアップを精査し、充実させることを心掛けております」
また、日本国内で販売を見合わせている商品があるかについては、
「日本では美白商品の取り扱いはないため、このニュースを受けて販売中止を予定している商品はありません」
と回答した。実際、編集部が6月末の時点で公式サイト上を確認したところ、国内商品に「美白」という用語は使われていなかった。
資生堂、花王、コーセー、ポーラ4社の今後の方針は?
一方でニューヨーク・タイムズの当該事件を報じるツイートには、アジア系だとみられるアカウントから「私たちが何千年もの間愛用してきた美白製品をアジア人が好んではいけないのはなぜですか。私たちの好みは黒人にどう関係しますか?」、「アジア人は白人であることが好きで、黒人を軽蔑しているわけではありません。アジアを代表するふりをしないでください」といったツイートが寄せられている。
日本語でも、J&Jの美白化粧品販売中止に対してツイッター上で、「勝手に東洋の美白を白人崇拝や白人至上主義に結び付けるな」、「焼けた肌が美しいと思う人もいる。白い肌が美しいと思う人もいる。これは別に人種による違いじゃない」といった声が上がった。中には、歴史上の文献を持ち出し、反証とするアカウントも複数見られた。このように日本国内では、「美白」という用語が人種を志向するものではないとする風潮が見られた。それでは、国内の化粧品メーカーは「美白」という語をどのように考え、用いているのだろうか。
J-CASTニュースが、花王・資生堂・コーセー・ポーラに取材を申し込んだところ、7月16日までに、メールで回答を得た。
J-CASTニュースは、各化粧品メーカーに、J&Jのような美白化粧品販売中止への動きがあるか尋ねた。
資生堂「現時点で回答できることはありません」
花王「現段階で決まっていることはございませんが、多様性を尊重するという考えのもと、引き続き、様々な視点から議論・検討をしてまいります」
コーセー「現在、そのような動きはありません」
ポーラ「今のところそのような計画はございませんが、お客様が大切に思うことに寄り添って対応していきたいと考えています」
また、同4社に「美白」の見解について尋ねた。
「白いことが正しい」というものではなく...(ポーラ)
美白効果の化粧品における、「美白」の見解について4社はこう答える。
資生堂「当社は『しみ・そばかすを防ぐこと』や『みずみずしく透明感のあるすこやかな肌』を目的としてご使用されるお客さまに対し、『メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ』という日本で認められた効能・効果を基本に、世界各国の薬事規制に準拠して美白商品を販売しています」
花王「すこし長くなるのですが、背景からお話ししますと、もともと花王グループでは、『ダイバーシティ(多様性)の尊重』を企業活動における行動原則の一つに掲げ、『花王人権方針』のもと事業を推進しています。もちろん、化粧品の領域においても、あらゆる人のそれぞれの美しさを尊重し、一人ひとりが望む"自分らしい美しさ"を叶えるためのサポートを続けています。"自分らしい美しさ"を叶えるためのニーズには様々なものがあり、『シミ・そばかすを防ぐ』もその中の一つであると考えます。こうした多様なニーズにお応えするために、皮膚科学研究および商品開発を行っています。今後もより一層、多様性が尊重される社会の実現に向け、企業活動を推進していきたいと考えております」
コーセー「『美白』の効能であるシミ・ソバカスを防ぐなどに対するお客様のニーズは非常に高いと捉えています。しかし当社は『肌は白いほど美しい』等の画一的な価値観を押し付ける"ルッキズム"の考え方には反対の立場をとっており、お客さまの考える『なりたい肌』の多様性や、ひとりひとりの個性を尊重し、それぞれの『美しさ』へのニーズに応えることが、美白の分野においても大切だと考えています」
ポーラ「弊社での美白の概念は、『単に肌を白くすることを目指す』ことや『白いことが正しい』というものではなく、『その人それぞれがもつ肌の透明感を最大限に引き出し、その人自身の理想の肌へ近づけること』と定義しています。また、肌悩みの上位にあげられる、しみ・そばかすに対しては、過剰なメラニン産生を抑えたり肌細胞のターンオーバーを促すアプローチを取っています。美白メッセージを再検討する計画は、今現在はございませんが、 お客様が大切に思うことに寄り添って対応していきたいと考えています」