「ニューヨーク・タイムズ」紙の論説欄で編集者を務めたバリ・ワイスさんが2020年7月14日に辞任を発表した。彼女が自らのウエブサイトに掲載した辞表が今、物議を醸している。
2016年11月の大統領選では、マスコミの予想を裏切り、トランプ氏が勝利した。「ニューヨーク・タイムズ」紙は、見逃していた米国の現実があったとの反省から、ワイスさんを編集者として起用。保守派の声も含めて、紙面に反映させることにした。
「批判を受けそうな記事は、避けられます」
ワイスさん辞任の直接のきっかけは不明だが、今回の辞表で職場環境について語ったのは、次のような内容だった。
「私は名誉を感じ、自分の仕事に誇りを持っていました。しかし、結局、他のアメリカ人を理解することの大切さ、同族意識に抵抗する必要性、民主主義社会での自由な意見交換の重要性は、学ばれることがありませんでした。
記事を読んで読者がそれぞれの結論を引き出すのではなく、ごく一部の読者を満足させるために、記事は選ばれ、語られています。ジャーナリズムとは歴史の最初の下書きを書く任務だと、私はずっと教えられてきました。
私と考えが合わない同僚からはいじめに遭い、ナチ、人種差別者と呼ばれ、ツイッターでも激しく攻撃されました。上層部の人たちは、勇気があると私を個人的にほめながら、ただそばで見ているだけでした。中道派としてアメリカの新聞で働くことに、勇気が必要であってはなりません。
2年前には問題なく掲載された論説が、今や編集者や記者にとって重大問題になります。批判を受けそうな記事は、避けられます。ここで私に託された任務を、これ以上、続けることはできません」