契約企業の後悔
そのうちの2社が重い口を開いた。
ある繊維メーカーは、A社からの営業電話がきっかけでサービスを知り、インターネット通販「楽天市場」で販売するTシャツの口コミを40件依頼した。「しっかり調べればステルスマーケティングだということがわかった。バズマーケティングの一環で、深い認識や精査を行わずにGOを出してしまった」
取材を受け、A社には新規投稿の停止と投稿削除を求めたとする。
約100万円で口コミを購入したブライダル会社の役員は、「私たちにとっての戒め」として、顧問弁護士と相談の上で取材に応じた。
明確な回答は避けたが、結婚式場口コミサイト「みんなのウエディング」「ウエディングパーク」と店舗情報サービス「Googleマイビジネス」への投稿を依頼したとみられる。動機については「一組でも多くのカップル様から口コミを集めたかった。食べログさんなどと一緒で、ランキングの上位に持っていけば注目を集められる」と話す。
口コミを増やす具体的な手段は知らなかったというが、「先方さんがされている内容はこうだろうなっていうのは理解していた」という。「書き込みは実体験にもとづかないということか」と質すと、「イエスかノーで言うとイエス」と答えた。「私たちとしてもどこまで継続するのか考えていた。今回の件を受けて本日付(7月10日)でサービスを停止した」
口コミ代行業者、広告主(依頼者)はいずれも法的責任を問われる可能性がある。消費者庁表示対策課にも勤務経験がある広告規制に詳しい染谷隆明弁護士が解説する。
「代行業者は不正競争防止法違反(誤認惹起行為)となる可能性があります。例えば、広告主と共同被告にして、競合事業者による差止請求や損害賠償請求が考えられます。口コミの商材が健康食品や化粧品などで、効果効能をうたっていれば、薬機法や健康増進法の誇大広告規制等の適用もありえます」
広告主はそのほか、不当表示を禁止する景品表示法に抵触する恐れや、口コミサイト側が損害を立証できれば法的措置も取りうるという。
多くの口コミサイトでは、「投稿するコンテンツは、その場所での実体験に基づいている必要があります」(Googleマイビジネス)、「店舗関係者が関係店舗へ口コミを投稿することを禁止します」(食べログ)などと"やらせ"行為を禁じている。
化粧品口コミサイト「アットコスメ」は「不正行為の事実が確認でき次第、業者やサービスに対し注意勧告及び弊社顧問弁護士と共に然るべき対処をしております」と警告している。