コロナ禍の中では健闘
2018年秋ごろは新型EV「モデル3」の量産がなかなかうまくいかず、資金繰り不安も浮上し、19年初めには人員削減にも踏み切るなど不安定な条項が続いた。ただ、このあたりが「底」で、秋には斬新なピックアップトラック「サイバートラック」を発表、中国・上海の工場も着工から1年足らずで稼働に漕ぎ着けるなど生産体制も整い、19年7~9月期から3期連続で黒字を計上した。20年4~6月期は赤字になりそうだが、世界販売台数は前年比5%減の9万650台と、コロナ禍の中では健闘している。
とはいえ、テスラの20年12月期の販売目標は50万台で、トヨタなど1000万台級のトップ集団にははるかに及ばない。それでもテスラの株が買われるのはEVの将来性とともに、専業メーカーとしての強さと身軽さのためとみられている。
トヨタやVWなどもEVに取り組むが、エンジン車を中心とする既存事業の規模が大きく、事業モデルをEV中心に転換していくにしても、時間がかかる。特に、エンジンという内燃機関をもつか持たないかの違いは月とスッポン。ガソリン車やディーゼル車に使われる部品数約3万点に対して、電気自動車はその約1万点にすぎず、膨大な下請け会社群といった「重荷」もテスラにはない。
もちろん、現状ではEVの生産コストはガソリン車と比べて1台当たり100万円以上高いとされるが、専業として先行するテスラは部品の内製化などでのコスト削減に取り組んできている。特に大きいのがEVの基幹部品中の基幹部品である電池で、大手自動車メーカーの多くが外部から調達しているのに対し、テスラは米ネバダ州に巨大電池工場を持つなど、一歩も二歩も先を行く。コネクテッド(インターネットにつなげる)や自動化でも、他社に先駆けて機能を搭載するなど、フロントランナーの一角を占める。