米電気自動車(EV)最大手、テスラの株価が時価総額でトヨタ自動車を抜いて業界首位に立ったニュースが注目を集めた。自動車業界は電動化、自動化など「CASE」と称される100年に1度の変革期にある。市場は、その牽引役がテスラだと判断しているのか。
テスラの株価は2020年7月1日に1119ドルで取引を終え、時価総額は約2070億ドル(約22兆2300億円)に。トヨタの1日終値での時価総額は21兆7185億円で、これを上回った。株価はその後も続伸し、7月10日には1500ドルに乗せた。この1年でも、テスラの株価は6倍近くに急騰しており、1月に独フォルクスワーゲン(VW)を抜いて2位になった勢いのまま、一気にトップに躍り出た。
2018年にはSECによる提訴騒動も
コロナ禍のなか、各国中央銀行によるジャブジャブの金融緩和を受けて株式市場全体が金融相場の様相を呈して企業業績に必ずしも連動しない熱狂の中にあるとはいえ、その好調ぶりは他を圧する。
テスラは2019年の販売(引き渡し)台数が約36万7500台で、EVメーカーとしては堂々のトップだが、ガソリン車を中心に世界で1074万台を販売したトヨタの30分の1と、規模では遠く及ばない。ただ、EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を合わせた広義の電気自動車市場に限ると、トヨタは約6万台の12位にとどまっている。
テスラは最近まで生産体制に不安を抱え、経営への不信が絶えなかった。その中で、2018年夏にはイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がツイッターで、「非公開会社化を検討している」と、突然ツイートし、物議をかもした。四半期ごとの決算で市場に評価されること、つまり経営が安定しない中で株価が乱高下することにいら立っての発言だが、「資金は確保した」と言いながら具体的に説明せず、株式の非公開化という重要な経営情報の開示として問題化。高い生産目標の未達成が続いていることへの情報操作の疑いを含め、米証券取引委員会(SEC)がマスク氏を提訴する事態に発展。マスク氏は兼務していた会長を退任(CEOには留任)し、罰金2000万ドルで何とか事態を収めた。