現役記者らが実名で提言「ジャーナリズムの信頼回復を」 賭け麻雀事件で、若手や女性記者に危機感

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   新聞記者と東京高検検事長(当時)による「賭け麻雀」事件を受け、現役の新聞記者や研究者ら有志が報道機関の取材のやり方の見直しなどを求める「ジャーナリズム信頼回復のための提言」をまとめた。発起人6人と賛同者135人(2020年7月10日時点)は実名を公開し、日本新聞協会の加盟社129社の編集局長・報道局長に提言を送った。

   発起人の1人で朝日新聞記者の南彰さん(新聞労連委員長)によると、賛同者は10日付の送付後にさらに増え、13日の時点で約650人に上っている。このうち約100人は新聞協会会員社の現役社員だという。

  • 朝日新聞東京本社(左)と産経新聞東京本社
    朝日新聞東京本社(左)と産経新聞東京本社
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現役記者らが実名で 「読者目線から乖離した感覚、変えないと」

   問題発覚後、いずれもジャーナリストの大谷昭宏さん(元読売新聞記者)と池上彰さん(元NHK記者)がそれぞれ新聞に寄稿したほか、一部の新聞社OBらがコラムを掲載したりSNSに意見を投稿したりするなどの動きはあった。しかし今回は現役記者が中心で、しかも実名。普段は競い合うばかりの新聞社や通信社の現役記者らが、連携して行動を起こすことは珍しい。先述の南さんは今回の動きの背景をこう語る。

「賛同者の中心は、各社の若手記者や女性記者です。賭け麻雀事件について、各社の編集部門の幹部やベテランからは『(産経記者や朝日社員は)難しい取材対象によく食い込んだ』とか、『タイミングが悪かっただけで、必要悪だ』などと評価する声も多かったそうです。読者の目線から乖離したそんな感覚自体を変えないといけない、と志を持ってこの業界に入った若手・女性記者らは強い危機感を持っています」

   提言では、賭け麻雀事件で表面化した、記者の自宅で取材対象者と夜な夜な賭け麻雀をするという取材手法そのものと、取材対象者との癒着・なれ合いについて、「日本メディアの職業文化に深く根ざしたもの」と批判した上で、こう指摘している。

「新聞・通信社やテレビ局などに所属し、記者クラブで取材をした経験のある人間なら、だれもが知っています。取材対象と親密な関係になることは『よくぞ食い込んだ』と評価されることを。記者会見という公開の場での質問よりも、情報源を匿名にして報じる『オフレコ取材』が重視されていることを。あるいは、発表予定の情報を他社より半日早く報道する『前打ち』記事が評価され、逆に他社報道に遅れを取れば『特落ち』という烙印を押されることを。『賭け麻雀』はそれ単独の問題ではなく、オフレコ取材での関係構築を重視するあまり、公人を甘やかし、情報公開の責任追及を怠ってきた結果です」
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