プロ野球の公式戦が開幕してから1カ月が経とうとするなか、セ・リーグ守護神の調子が上がらない。2020年7月12日までに巨人、阪神、広島の3チームの守護神が出場選手登録を抹消され、DeNA、ヤクルト、中日の守護神も本来の調子を出せないでいる。
J-CASTニュース編集部は横浜大洋ホエールズで2度にわたって最優秀救援投手に輝いた齊藤明雄氏(65)を取材し、今シーズンの救援投手事情を分析してもらった。
スコット、デラロサ、藤川が登録抹消
今シーズン、セ・リーグの抑えで早々と「脱落」したのが広島のテイラー・スコット投手(28)だ。来日1年目となる新外国人投手はチームの守護神として大きな期待がかかったが、開幕から5試合で2敗、防御率21.00を記録し、7月3日に出場選手登録を抹消された。広島首脳陣は、スコットの代わりに菊池保則投手(30)を守護神に指名。以降は菊池が広島の最後の砦となっている。
巨人では昨シーズンに続いて守護神を務めていたルビー・デラロサ投手(31)が左脇腹の肉離れで戦線を離脱。回復まで時間がかかりそうな状況で、沢村拓一投手(32)が新たな抑えの候補に挙がっている。一方の阪神は、ベテラン藤川球児投手(39)が7月12日に右肩のコンディション不良のため出場選手登録抹消。藤川に代わる守護神として、ロベルト・スアレス投手(29)、岩崎優投手(29)のW守護神構想も浮上している。
スコット、デラロサ、藤川の戦線離脱をはじめとし、今シーズンのセ・リーグの抑えがいまひとつ調子に乗り切れていない。このような状況を踏まえ、齊藤氏は開幕からここまでを次のように語った。
「抑えのピッチャーは警戒しすぎている」
「ゲームが3カ月間なかった影響は当然あるでしょうが、今シーズンは開幕から打者がよくバットを振れている。例年であれば開幕当初はピッチャーが有利となり、『投高打低』になるケースが多いのですが、今年は思いのほか打者が振れている。ホームランも良く出ていますし、飛距離も出ている。このようなこともあり、全体的に抑えのピッチャーは警戒しすぎているとの印象を受けます」(齊藤氏)
また、齊藤氏は抑え投手の投球内容にも言及した。
「一番気になるのがリリーフ陣のコントロール。変化球に関しては投げてみないと分からないというところもあるが、ピッチングの基本となる真っすぐのコントロールが良くない。真っすぐのコントロールがつかないので変化球を待たれてしまう。バッターも変化球に絞りやすくなる。真っすぐがあまり低めに決まらず、ベルトラインの打ちやすいところにいってしまっているケースも見られます」(齊藤氏)
今シーズンは新型コロナウイルスの影響で公式戦開幕が3カ月遅れ、投手、野手に関わらず調整の難しさがあった。そのような中で、齊藤氏は投手の調整する姿を見てある点が気になったという。
「やはりピッチングはユニフォームを着てやらないと...」
「ピッチャーが調整しているところを見ましたが、ユニフォームを着て練習している選手は少なかったですね。やはりピッチングはユニフォームを着てやらないと、ユニフォームが足や背中にまとわりつく感覚がありますから、その辺でのコントロール的な問題が出ているのかもしれません」(齊藤氏)
出場選手登録を抹消された3投手の他には、DeNA山崎康晃投手(27)、ヤクルト石山泰稚投手(31)、中日・岡田俊哉投手(28)らがそれぞれのチームで抑えを務めるが、7月13日時点で山崎、石山ともに防御率は4点台、岡田の防御率は6.23となっている。
「山崎投手に関してはツーシームのキレがあまり見られません。いい時はいいのですが、ツーシームが少し打者に見切られている感じがします。ボール先行が多く、球数も多いです。コントロール的に不安があるのかもしれません。ヤクルトの石山投手については1年間を通して働けるかなという不安はあります。中日の岡田投手は去年、抑えをやって今年もいけるかなというところで少しつまずいている感じです。いずれにしても現時点ではどのチームの抑えも心配ですね」(齊藤氏)