スーパーやコンビニエンスストアなどで配布するプラスチック製レジ袋の原則有料化が始まった。
環境保全に一役買うとの期待はあるものの、コロナ禍で疲弊する外食産業などには困惑も広がっており、「有料化のタイミングが悪すぎる」との批判は少なくない。
「今、スタートするのは正直、厳しい」
有料化は容器包装リサイクル法に盛り込まれた。レジ袋などのプラスチックごみによる環境汚染を防ごうという狙いだ。プラごみは川から海に流れ、魚や鳥などの海洋生物が誤って飲み込んで死亡するほか、微細なマイクロプラスチックとなって生態系にも重大な影響を与えており、世界的な関心事になっている。欧州やアジアなど多くの国では既にレジ袋の使用制限が一般化しており、東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本は、国際的な非難を避ける狙いもあって、遅まきながら対応に乗り出したとされる。
有料化を機に、セブン-イレブン・ジャパンや東急ストアなど大手コンビニやスーパーの大半はレジ袋を2~5円で提供。「マイバッグ」を持参する客も増えている。
ただ、「今、スタートするのは正直、厳しい」との声は多い。コロナ禍で来店客の激減に苦しむ外食企業の多くは今、料理のテークアウトを強化している。東京都内のある外食店はランチ用に500円程度の弁当を売り始めたが、自社負担でプラスチック製の袋を使うしかないという。「お客さんから1枚2~3円をもらっていたら、手間がかかりすぎて、効率が下がる」からだ。せっかくテークアウトで再スタートを切ろうとしているのに、レジ袋有料化は足を引っ張りかねない。
吉野家や日本ケンタッキー・フライド・チキンなど大手外食チェーンの中には、植物由来の原料を使った有料化制度の対象外になる袋を使い、引き続き無料提供しているところも多い。そうしたエコ素材が25%以上含まれれば無料でも構わないのだ。マイバッグにすると液漏れなどが起きる懸念があるためとも言われている。しかし、植物由来原料の袋のコストは従来のレジ袋の1.5~2倍程度と割高だといい、厳しい経営環境の中、負担増は各社に重くのしかかる。
レジ袋はプラごみの「2%」程度
一方、都心のスーパーなどでは、客が商品をマイバッグに入れるスペース自体がない所も多く、混乱も出ている。ある定員は「お客さんがレジ横で商品を詰めている間、レジ打ちの作業が止まってしまう」と嘆く。
日本のプラごみの排出量は年間約900万トンに上り、その削減は社会的な課題だ。しかし、そもそもレジ袋は全体の2%程度にすぎない。レジ袋だけ削減しても「海洋汚染などを防ぐ効果は極めて限定的」と指摘する企業関係者もいる。
小泉進次郎環境相は6月30日の記者会見で、「有料化をきっかけにプラスチックごみ問題について考えてもらいたい」と述べたが、有料化は実質的に効果がある策というより、象徴的な意味合いが大きいようだ。ペットボトルや多彩な工業製品などでどのような対策が進むかが、プラごみ問題の「本丸」。その意味からも、「先兵」であるレジ袋できっちり成果を上げる必要がある。