NEC×NTTで「基地局3強」挑戦 6G覇権へ政府も後押し

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   NTTとNECが、第5世代(5G)移動通信システムなど先端通信網の共同開発で資本・業務提携する。NTTがNECに約644億円出資し、同社株を約4.8%保有し、共同で次世代技術の開発を急ぎ、劣勢だった海外での巻き返しにもつなげる。かつての「電電ファミリー」が手を組んで国際競争で巻き返しを狙う。

   NECが2020年7月10日にNTTに対して第三者割当増資を実施するとともに、保有する自己株式も譲渡する。4.8%の保有率は第3位の株主になる。調達した資金は2030年ごろまでにネットワーク関連の研究開発費などに充てる。

  • ねらいは「6G」にあり
    ねらいは「6G」にあり
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「2030年に世界シェア20%を目指す」

   国内でも3月から商用サービスが始まった5Gは、自動運転や遠隔医療、スマート工場など次世代技術の基盤(インフラ)となり、製造業からサービス業まで、幅広い産業の国際競争力を左右する。世界中の通信会社が基地局整備を進めるなか、2019年の海外での基地局シェアはスウェーデンのエリクソンとフィンランドのノキア、中国・華為技術(ファーウェイ)の3強が受注合戦を展開して併せて7~8割のシェアを占める。NECは日本国内ではNTTドコモや楽天の基地局整備にかかわり一定の存在感を見せるが、世界シェアは6位(0.7%)にとどまっている。

   NTT・NEC連合は共同研究開発を抜本的に強化し、3強に挑む。当然、長期戦になるが、NTTの澤田純社長は「世界で通用する日本発の付加価値の高い製品、システムを一緒に作っていく。厳しい環境でも我々がリーダーをとっていくまで頑張る」と強調。そこで、カギになるキーワードが「オープン化」、つまり、顧客や取引先とオープンに協力することだ。基地局について、NTTグループを中心に100社超で取り組んでいるもので、1社がまとめて機器を納入する垂直統合型とは違い、複数メーカーでネットワークを作り、コストを抑えようというのだ。この仕組みで販路を開拓し、海外市場にも積極的に販売して「2030年に世界シェア20%を目指す」(NECの新野隆社長)という。

   両社の連合の背景には、ファーウェイをめぐる米中の対立激化がある。中国政府の強力な後押しを受けて年2兆円規模の研究開発費を投じてきたファーウェイは他の大手製品より2~3割安いとされ、新興国を中心に広がる。これに対し、通信機器を通じて機密情報などを抜きとられるのではないかといった安全保障上の問題を理由に、米トランプ政権はファーウェイ排除に乗り出し、先進諸国ではファーウェイ排除が定着してきている。

   こうした状況の変化は、出遅れていた日本勢にとって、巻き返しのチャンス。この流れに乗ったのがNTT・NEC連合ということだ。ファーウェイへの対抗は5Gにとどまらない。むしろ、次世代の6Gでの協業こそがNTT・NEC連合の狙いだ。

国際競争に「電電ファミリー」で打って出る

   NTTは2019年5月に新しい通信システム「IOWN(アイオン)」構想を発表した。現在、電気信号でやり取りする情報をすべて光に置き換えることで、現行の100倍超も大容量のデータを少ない電力で伝送できるという。NECも光関連技術に力を入れており、両社の協業は大きな力を発揮しうると期待されている。

   6Gを重視するのは世界共通。すでに世界各国の企業や大学で研究が始まっており、政府は、ここで後れを取れば、産業革新だけでなく、サイバー攻撃への対応や軍事設備の運用など安全保障上も不利になりかねないとの懸念を強めている。総務省が6月25日まとめた6Gの推進戦略で「技術開発に日本が強みを最大限に発揮して深く関与することが重要」と位置づけ、国をあげて支援する方針を明確にしたのも、政府の危機感と期待の表れだ。具体的には産学官の研究開発を後押しし、実験用に電波を使いやすくするほか、税優遇も検討する。

   1985年のNTT民営化前の日本電信電話公社時代から、大量の通信機器を独占的に納入するNECや富士通は「電電ファミリー」と呼ばれた。1990年代、米政府の圧力で門戸が開かれると国内機器メーカーは価格や性能で敗退。NTT自体も、事業や地域で分割されたこともあって、海外展開に後れを取った。NTTと、電電ファミリーの長男格だったNECとの資本提携を第一歩に、国策を担って次世代通信をめぐる国際競争に挑むことになる。

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