2020年8月22日と23日に放送される「24時間テレビ 愛は地球を救う」(日本テレビ系)で、今年は「24時間マラソン」が行われないことが7月6日に発表された。
「24時間マラソン」とは、毎年放送される同番組の中心コーナー。その年の走者が24時間の間にゴールである日本武道館(2019年は両国国技館)を目指すことで知られるが、今年は新型コロナウイルスの流行が続く中、マラソンの中止が発表された。
24時間マラソンもできないとなると...
24時間マラソンという、テレビ界の「恒例行事」すら中止に追い込んだコロナの流行。24時間テレビでは他にも、例年とは違い「無観客で行われる」という点も発表されており、コーナーの有無だけではなく番組の進行方法にも影響が出た形だ。
すでにバラエティーや情報番組において飛沫防止のためのアクリル板が多用されるなど、放送のやり方そのものにも影響が出ている中、24時間テレビもその大きな波に飲み込まれることに。
そうなると、24時間テレビ以外の「恒例の番組」が「今年はどうなるか?」が気になってくる......。そう、大みそかに放送される「NHK紅白歌合戦」と「ガキの使いやあらへんで 笑ってはいけないシリーズ」だ。
実は、ネット上では日本国内でコロナの流行が始まった頃から、「新型コロナ騒動で今年の紅白歌合戦は中止かな?」「本当に今年の笑ってはいけないが楽しみだなー。(中略)コロナで収録中止とかにならないでほしいな!」といった声が上がるようになっており、大みそかを代表する2番組が例年通り放送されるか否かを気にする声が散発的に上がり続けているのだ。
そこで、今回は「どうすればこれら2番組が放送できるか」「どのような形でこれら2番組が放送されるのか」を考えていこう。
「大物」以外もみんなリモート
まず紅白だが、無観客なのは当然として、例年会場となっているNHKホールを使うこと自体が難しいだろう。大量のスタッフを大規模なホールに集めてしまえば、それこそ「3密」は避けられないからだ。
そこで考えられるのは「出演者のリモート出演」だ。「リモート紅白」は、6月1日に放送された「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)で、司会を務める「関ジャニ∞」の村上信五さん(38)が言及するなどすでに注目されている。
実際にやるとなれば、「複数のスタジオに分けて生放送する」という形で実施されるのではないだろうか。
具体的には、まず、司会者が入るメインスタジオを1つ用意し、進行はそこで実施。さらに、歌手が歌を披露するスタジオを複数用意し、そこで出場歌手が入れ代わり立ち代わり出入りして歌を披露する――いわば「入れ替え制出演」だ。こうすることで、1カ所に大量のスタッフが集まるのを防ぎつつ、歌手同士が鉢合わせするのも防止。結果、3密をいくらかは回避できるという算段だ。
つまり、メインスタジオから見ると、「歌手全員がリモート出演」の状態となるのである。また、場合によっては、全員が生放送で出演することをあきらめ、出場歌手によっては、これらのスタジオで事前に収録したVTRを使うという手もありだろう。
なお、紅白にとって「リモート出演」自体は決して初めてではない。というのも、紅白ではこれまでにも、「カウントダウンコンサートを開催中の歌手」など、「大物」を中心にNHKホールに来ていない歌手を、その会場からの中継で出演させるという手法を使ってきているわけであり、それを考えると、「リモート出演」自体は珍しくも何ともないのである。そうなると、2020年は「初の全員リモート出演」という意味で歴史に残る放送回となる可能性があると言えるだろう。
さまざまな変化が予想される「笑ってはいけないシリーズ」
次に、「笑ってはいけないシリーズ」について考えてみよう。近年は廃校などでロケが行われることが多いが、例年の放送を見ると、レギュラー出演者の5人がさまざまな部屋に出入りし、笑いの刺客が放つ多種多様な攻撃に耐えるという撮影方法は、これ自体はそれほどの3密状態になることは少ないと思われる。
常に顔を突き合わせることとなる5人の間での感染にさえ注意すれば、番組の基本的なフォーマットの変化は紅白ほどは要求されないのではないだろうか。
ただ、随所に差し挟まれる各コーナーは、中止を含め相当な改変を求められそうだ。冒頭のバスシーンは5人とスタッフをバスに詰め込むことになるため、実施自体が危うい。2018年まで定番だった「レクリエーションコーナー」も大勢の出演者が一堂に会するため不可。さらに、同様の理由で「上島軍団VS出川軍団」(2019年は本編では放送されず、翌年1月4日に「完全版SP!!」として放送)も厳しいだろう。また、やはり2018年まで定番だった「グラウンドでの鬼ごっこ」も、鬼ごっこであるがゆえに「接触が避けられない」ことから無理だろう。
摘発が甘くなる!?
差し挟まれるコーナーについては相当な改革が求められそうだが、次に、進行方法の変化について考えてみよう。前述したとおり、各教室での撮影はそれほどの変化は必要なさそうだが、それでも、レギュラー出演者の5人が「大声を上げて笑ってしまう」という点は飛沫防止の観点から看過できない。 そこで考えられるのが、「マスクを着用したままでの撮影」だ。これなら、飛沫を最大限減らすことが出来る。しかし、これでは表情の変化が分かりづらくなり、多数の「摘発漏れ」が発生しそうだ。
ただ、これはむしろ「朗報」と言えるかもしれない。近年は収録の際に「痛み止めを飲んで撮影に臨んだ」といった声が出演者から上がるなど、年々年を取る出演者にとっては毎年厳しさがアップする状況となっているわけであり、それを考えれば「摘発が甘くなる」というのは決して悪い変化とは言えないからだ。また、マスクを生かした「笑い隠し」や、これを暴露しようとする出演者同士の攻防など、新たな見所も期待できる。
お仕置きが凶悪化する!?
ただ、摘発後の「お仕置き」に関しては、逆に出演者に厳しい変化が予想される。例年、笑ってしまった際の罰は「柔軟性が高い棒で尻を叩かれる」というものだが、接触禁止の観点からは、仮に棒でしか触れなかったとしても出演者の至近距離まで行かねばならず、やはりよろしくない。
ヒントとなるのが、シリーズ第1回(2003年に通常放送で4回に分けて放送)のみで採用された「吹き矢」による罰だ。これなら番組スタッフは出演者らと距離を取ることが出来るため、接触禁止の観点からも問題ない。
問題は「吹く」瞬間の飛沫だ。これを考えるとそのまま再利用はできないが、とはいえ吹き矢をグレードアップしたような、別の方法を使った「飛び道具」が採用される可能性はかなり高いのではないか。
ただ、「吹き矢」がシリーズでは1回しか採用されていないところからも分かる通り、飛び道具による罰は、棒に比べて出演者への負担がはるかに大きいものである。出演者の松本人志さん(56)は以前、「ガキの使いやあらへんで」(日本テレビ系)の通常放送で、吹き矢で負った傷がなかなか治らなかったと話しており、その肉体的負担は相当なものであることが分かる。
また、シリーズ第1回では出演者が逃げないようにスタッフがその体を押さえつけていたが、仮に2020年に吹き矢(あるいはこれに準ずる「ソーシャルディスタンスお仕置き」)を導入する場合、接触禁止の観点から出演者は自らの意志で「甘んじて」矢を受け入れなければならず、その精神的負担は計り知れない。
これらを総合すると、2020年の「笑ってはいけない」は例年を超える「阿鼻叫喚の地獄絵図」となってしまう可能性がありそうだ。ただ、「笑ってはいけないシリーズ」は紅白と並んで毎年国民が待ち望んでいる番組。例年の高視聴率を考えると、万難を排しての実施が期待されているのではないだろうか。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)