半導体製造装置国内最大手、東京エレクトロンの株価が連日の上場来高値を記録している。開示を控えていた2021年3月期の業績予想について、需要拡大の見通しを踏まえて増収増益と20年6月18日に発表して以降、買いが優勢となり、日々上値を追う展開となっている。残り少なくなってきている「世界で戦えるニッポン企業」に注目が集まる格好だ。
2021年3月期の業績予想では、売上高は前期比13.5%増の1兆2800億円と過去最高を見込んだ。営業利益は15.9%増の2750億円、純利益は10.7%増の2050億円で2桁増益を予想した。次世代通信規格「5G」や人工知能(AI)の普及に加え、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的なテレワークの増加がサーバー関連需要を押し上げ、「半導体製造装置市場は前年比10%程度の増加を見込む」としている。同様に未開示だった配当予想も同時に公表。純利益が増えることに伴い、年間配当は660円と前期から72円増える。
今夏ボーナスの日経調査(6月25日時点)でランキング1位
野村証券は発表翌日に配信したリポートで「日本最大の企業である当社(東京エレクトロン)が、自社の情報網による調査・裏付けを背景に強気な市場・業績の見通しを示したのは好印象」と指摘し、投資家の買い意欲を誘った。野村は目標株価を2万7814円から3万2191円に引き上げた。
業績改善は従業員にも恩恵があるようで、日本経済新聞がまとめた今夏ボーナス調査(6月25日時点)でランキング1位(ランキング付け可能な377社のトップ)の214万8910円だった。
株価は6月26日の東京株式市場で前日終値比4.0%(1025円)高の2万6570円まで上昇し、約4カ月ぶりに上場来高値を更新。その後も6月30日、7月1日、2日、3日、6日、7日と6営業日連続で高値更新。7日には初めて3万円の大台に乗せた。
「コロナ禍の中での需要の強さ」と「懸念材料」
株価が上昇を続けたのは、業績予想発表後も投資家の買いを後押しする材料が相次いだためだ。6月29日に米半導体大手マイクロン・テクノロジーが2020年3~5月期決算を発表し、売上高が市場予想を上回ったことでコロナ禍の中での需要の強さが確認された。7月2日には日本半導体製造装置協会(SEAJ)が、2020年度の日本製の半導体製造装置の世界での販売額(日系企業の国内及び海外への販売高)が前年度比7.0%増の2兆2181億円となるとの見通しを発表した。SEAJは「予測の背景」として「テレワークや巣ごもり需要の拡大でデータトラフィックが爆発的に増加し、データセンタ関連需要が急増している」と指摘した。
懸念材料はやはりコロナの影響。世界の人々の収入が減ることで最終製品であるスマートフォンの新規購入が鈍れば、半導体メーカーの設備投資を商機とする東京エレクトロンにもいずれ響いてくる。また、米中貿易戦争の行方次第では、米陣営にある日本の企業として中国メーカーに装置を販売しにくくなる可能性もある。とはいえ、数少ない日本の優良企業であることはまぎれもない事実で、当面は上昇基調が続くと予想する向きが多い。