プロ野球の捕手の起用法に関してセ・パ12球団で違いが――。
今シーズンはここまで捕手を固定するチーム、複数人の捕手を併用するチームの両方が見られる。それぞれのチームが監督の方針に従って捕手の起用法が「固定」と「併用」に分かれるが、起用法の違いはチームにどのような影響を及ぼすのか。J-CASTニュース編集部は、楽天の元ヘッドコーチで、巨人などでコーチを務めた橋上秀樹氏(54)に聞いた。
阪神は開幕3連戦で日替わり起用
捕手の起用法に関して、今シーズンのセ・リーグを見てみると、2020年7月6日までに捕手をほぼ固定しているのは広島だけだ。広島は13試合を消化し、会沢翼(32)が11試合でスタメンマスクを被っている。残り2試合は若手の坂倉将吾(22)がスタメン出場している。
リーグ首位を快走する巨人は小林誠司(31)、炭谷銀仁朗(32)、大城卓三(27)の3捕手が併用して起用されるも、小林が左腕骨折のために戦線離脱しており、現在は炭谷と大城の2人が併用されている。内訳をみると、15試合中、炭谷が7試合でスタメンマスクを被り、大城の6試合、小林の2試合と続く。
開幕3連戦で日替わりの捕手起用となった阪神は、開幕スタメンの梅野隆太郎(29)が直近6試合連続でスタメン出場している。阪神は巨人との開幕カードで梅野、原口文仁(28)、坂本誠志郎(26)の3人の捕手で回し、その後は梅野と原口を併用する形で起用。ここにきて梅野を固定して起用し続けている。
「より打てるキャッチャーを起用したいというのが本音」
DeNA、ヤクルトはともにベテラン捕手が軸となった起用法となっている。DeNAは伊藤光(31)を軸に戸柱恭孝(30)、嶺井博希(29)、高城俊人(27)らを起用。ヤクルトは楽天から移籍した嶋基宏(35)を中心に古賀優大(21)、西田明央(28)が続く。
中日の捕手起用に関しては、今後新たな展開を見せるかもしれない。開幕から木下拓哉(28)、加藤匠馬(28)の二軸に加え新人の郡司裕也(22)を起用してきたが、ここに育成上がりのアリエル・マルティネス(24)が食い込んできた。7月5日の巨人戦でスタメンマスクを被り、4打数3安打1得点の活躍を見せ、木下、加藤とのレギュラー争いに猛アピールした。
橋上氏によると、セ・リーグの球団は捕手起用に関して「打てる捕手」を望む傾向にあるという。
「セ・リーグはDH制ではありませんので、キャッチャーの打力が弱ければ7人での攻撃となってしまいます。ここがパ・リーグとの違いのひとつです。セ・リーグの過去の優勝チームを見ても分かる通り、その多くが打撃力のあるキャッチャーがレギュラーで出場しています。守備力が同等、もしくは少し劣っていてもチームとして、より打てるキャッチャーを起用したいというのが本音でしょう」(橋上氏)
一方のパ・リーグは...?
パ・リーグに目を向けると、セ・リーグに比べて捕手を固定しているチームが多く見られる。リーグ首位の楽天は太田光(23)が開幕からスタメンマスクを継続。西武は森友哉(24)、ソフトバンクは甲斐拓也(27)、オリックスは若月健矢(24)でほぼスタメンを固めている。
日ハムは清水優心(24)と宇佐見真吾(27)を併用する形で起用しているが、出場の割合からみると清水は10試合でスタメンマスクを被っており、宇佐見のスタメンは4試合。また、ロッテは田村龍弘(26)と柿沼友哉(27)をスタメンで併用して起用し、やや田村の方が出場の機会を得ている。
このようにセ・リーグでは併用が多く見られ、パ・リーグにおいては固定が4チームを占めた。この状況を踏まえ、橋上氏は捕手を固定して起用することで投手に与える影響について次のように言及した。
「キャッチャーを固定した場合、ピッチャーの特性を引き出しやすい。ピッチャーと意思の疎通がよりできるので、ピッチャーの性格、クセ、投げる呼吸、心理状態を把握しやすくなる。ピッチャーも安心して投げることが出来ます。キャッチャーの役目はピッチャーに気持ちよく投げてもらうことにありますから、固定することでその環境を作りやすくなると思います。一方でピッチャーの能力を把握しているあまり、求めるものが無難なものになり新たな発見をしづらくなってしまうこともあります」(橋上氏)
夏場の酷暑もひとつの要因?
また、橋上氏は捕手を併用するチームが増えた背景に夏場の酷暑がひとつの要因にあると指摘する。
「近年は夏場の気温の上昇し、選手の集中力、体力は落ちます。なかでもナイター明けのデーゲームは選手にとってきつい。データ的にもナイター明けのデーゲームでは攻撃力は落ちますし、それならば体力を温存している2番手、3番手でいこうとなります。レギュラーを休ませることが出来るという点においては大きいでしょう。今シーズンは連戦が続くのでキャッチャーを併用するチームも増えてくるのではないでしょうか」(橋上氏)