災害復旧は長期化の傾向
肥薩線を走る優等列車「はやとの風」「いさぶろう・しんぺい」「かわせみ・やませみ」はいずれも観光列車の要素が強い。長時間停車や低速運転で沿線風景・近代化遺産をじっくり観光できる設定だ。前出の観光資源の活用が図られていたが、球磨川第一橋梁・第二橋梁が流失し、復旧に相当な時間がかかることが予想される。
南九州の鉄道網では肥薩おれんじ鉄道(八代~川内)と、くま川鉄道(人吉温泉~湯前)も甚大な被害を受けている。肥薩おれんじ鉄道は鹿児島方面へのJR貨物の貨物列車も直通するが、これらも運休になっている。
近年はJRの路線であっても、災害で被災するたびに不通が長引くケースが発生している。JR北海道の根室本線では2016年の台風10号で被災以来、東鹿越~新得間が不通のままでバスによる代行輸送が続いており、JR九州では2016年の熊本地震以来、豊肥本線の肥後大津~阿蘇間が4年にわたり不通で、20年8月8日に全線で運転再開予定である。同社では2017年に九州北部豪雨で被災した日田彦山線もあったが、こちらは添田~夜明間の鉄道での復旧を断念し、BRT(バス高速輸送システム)への転換でJR九州と沿線自治体が合意している。肥薩線やその他の鉄道路線も、復旧のコスト・方法等について議論が必要なほどの大きな被害になっている。