歌手の浜崎あゆみさん(41)の自伝的小説をドラマ化した「M 愛すべき人がいて」(テレビ朝日系)の最終回となる第7回が、2020年7月4日に放送された。
ドラマでは福岡県から上京してスターを目指すアユ役を歌手の安斉かれんさん(20)、アユを発掘してスターの座に押し上げるプロデューサー・MAXマサ役を俳優の三浦翔平さん(32)がそれぞれ務める。第7回となる4日の放送では全盛期を迎えたアユの2000年における活躍ぶりと、マサとの別れが描かれた。
マサの力を借りずに自らをプロデュースするアユ
番組冒頭、「a victory」の大浜社長は「週刊誌に載る寸前だった」と力説しつつ、アユとマサの交際の証拠写真を役員会で暴露。何とか掲載を食い止めたとする大浜社長は、それに対する落とし前として、「新しい巨大フェスの開発」「映画事業の開発」「新人の発掘と売り出し」という、アユのプロデュースでただでさえ多忙を極めるマサにさらなる負担をかけるべく、3つの巨大プロジェクトをなすりつけたのだった。
このため、マサとアユは同棲しているにもかかわらず、その生活時間帯が重ならなくなるなど、徐々にすれ違い生活に。奇跡的に重なった夕方までの半休の日にデートの約束をするも、疲労と泥酔が原因で、マサは夕方まで寝過ごしてしまう。デートをあきらめ仕事に出かける準備を進めるアユと、リビングで遭遇したマサの間に、それまでにはない気まずい空気が流れ始めた瞬間だった。
その後も、レコーディングはマサ不在のまま行われるようになったが、そんな中、アユに変化が訪れる。マサの自宅のスタジオで本人から習った知識を基にして録音の際に自らディレクターに指示を出すなど、アユはマサの力を借りずに自らをプロデュース。その結果として、浜崎さんの代表曲である「SEASONS」が完成し、渋谷の街は同曲のプロモーション一色に染まったのだった。
原作小説にはない2000年が描かれた最終回
これら、アユがマサの手を離れて「自律的に」スターの座へと駆け上がっていく姿が描かれた最終回だったが、ドラマではこれらの出来事が2000年の出来事として描かれていた。ただ、その一方で、原作となった小説「M 愛すべき人がいて」では、1999年の「ミレニアムを迎えようとする」時期に、「Fly high」(2000年2月発売)のレコーディングが終わった浜崎さんに対し、エイベックスの松浦勝人会長(当時は専務)から、
「あゆは、俺の手を離れて、このまま一人でこの世界の頂点へ駆け上がるんだ」
と電話があったことが明かされており、物語は終了。つまり、最終回の内容は原作に基づいてこそいるが、時期はずらされていたということになる。ドラマと小説のどちらがより真実に近いかはもちろん浜崎さんと松浦会長にしか分からないことだろうが、その一方で、浜崎さんの歴史を紐解いていくと、最終回には、むしろ、ドラマの方が「史実」に近かったのではないかと思われるシーンもあったのだ。
ドラマと符合する、浜崎さんの「失踪」
番組中盤、こじれ切ったマサとの関係に疲れたアユは、電話にも出ず1人自宅マンションに閉じこもっていた。連絡がつかないままいくつかの仕事をドタキャンせざるを得ない状況に慌てふためく、マサの代わりにプロデューサーを務める流川翔(白濱亜嵐さん=26)とマネージャーの野島美香(河北麻友子さん=28)だったが、何とか連絡がつき、流川はアユの自室の前に到着。無事、アユを仕事に復帰させることに成功したのだったが、これに該当する可能性がある、ある事件が2000年に起きていたのだ。
同年5月に放送されたドキュメンタリー番組「スーパーテレビ情報最前線」(日本テレビ系=放送終了)では、当時、全盛期を迎え始めていた浜崎さんを特集。この中で、同番組が浜崎さんに密着取材を行ううち、一時期、浜崎さんが番組スタッフはおろか、エイベックスのスタッフとも連絡が取れなくなり、「失踪」した時期があったことが報告されている。番組スタッフが浜崎さんと連絡が取れなかった期間は「2週間」とのナレーションが入っている一方で、エイベックスのスタッフが浜崎さんと連絡が取れなくなった期間については言及されていないが、浜崎さんが「失踪」状態になったことは確実のようだ。
ドキュメンタリー番組の中でも貫かれていた「セルフプロデュース」
番組中では、2週間ぶりに番組スタッフの前に姿を表わした際に、明るい表情で「ごめんなさい! ごめんなさい!」と謝罪の言葉を連呼する様子が映っており、「滞った雑誌の合同取材」「心なしか、その表情に疲れがにじんでいるように見えた」とのナレーションが流れている。なお、「失踪」の直後には、「Far away」(2000年5月発売)のレコーディングがあったことが明かされており、ドラマでアユが一時的にではあるが連絡を絶っていたシーンがあることを思い出すと、脚本を作成する際に参考にされた可能性がある出来事だと言えよう。ちなみに、原作小説でも浜崎さんが「失踪」するシーンが描かれているが、それは1999年の出来事として描かれている。
なお、「スーパーテレビ情報最前線」では、浜崎さんがCDのジャケット撮影の際にスタッフに指示を飛ばすシーンや、初めての全国ツアーの内容を協議する会議で自ら議論を主導する姿が収められており、セルフプロデュースに余念がない様子が分かる内容となっており、この点もドラマと符合する点となっている。自らをプロデュースする力を身に着けたアユがマサの手を離れてスターとなる姿が描かれた最終回は、まさしく、浜崎さんがカリスマとなるまでの過程を忠実に再現したものだったと言えるのではないだろうか。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)