2020年7月5日に投開票された東京都知事選では、日本第一党党首の桜井誠氏(48)が前回16年の都知事選に続いて「5番手」となった。桜井氏は「在日特権を許さない市民の会」を立ち上げ、街宣活動が排外主義的だとして問題視されてきた。
桜井氏は3回にわたって開かれた「主要候補者」による討論会に一度も招かれなかったが、17万8784票を得票。前回から56.6%も得票を伸ばした。メディアへの露出がきわめて限られる中で、桜井氏はネットを利用した選挙活動を展開。中国を非難しながら新型コロナ対策を主張した。ネットを利用する度合いが高い年齢層や、千代田区や新宿区といった都心部での得票が比較的多かった。
得票率高いのは台東区、中野区、千代田区、豊島区、新宿区
21人が立候補した前回16年は、桜井氏は11万4171票を得票。小池百合子氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏、上杉隆氏に次ぐ5番手だった。
桜井氏は、現職の小池氏の再選確実が報じられた後に行った動画配信で、今回の選挙について「ひとつの大きな指針を示した」と総括。その意図を
「バーチャル選挙、バーチャル街宣、バーチャル対談。こういったものを通じて、皆さんもバーチャル、ネットの力を少しでも感じていただけたのでは」
などと語った。NHKが報じた出口調査の結果でも、桜井氏は5番手。年齢別に見ると、10代・20代と40代の支持が比較的多く、70代以上が最も少なかった。ネット利用の頻度が高い層の支持が多かったと読むこともできそうだ。
桜井氏の東京都全体の得票率は2.92%だが、地域別に見るとばらつきがあり、特に都心部での浸透が目立つ。最も高かったのが小笠原村と御蔵島村で、それぞれ3.65%。島しょ部以外では台東区(3.64%)が最も高く、中野区(3.50%)、千代田区(3.49%)、豊島区(3.48%)、新宿区(3.42%)と続いた。
逆に最も低かったのが青ヶ島村の0.00%(=0票)。島しょ部以外では檜原村(0.65%)、奥多摩町(1.45%)、日の出町(1.93%)、青梅市(2.25%)、瑞穂町(2.26%)の順に低かった。いずれも多摩地域の自治体だ。
「武漢肺炎」「シナ人」連呼しながら減税を主張
桜井氏は4年前と比べて、主張の軸足を微妙に変化させている。選挙公報を見比べると、16年は「都政を国民の手に取り戻す!」の大見出しで、(1)外国人生活保護の廃止(2)都内の不法滞在者を半減(3)反日ヘイトスピーチ禁止条例(4)総連、民団施設への課税強化(5)違法賭博パチンコ規制の実施、といった7つの公約を掲げていた。その多くが、外国人への規制を強めたり、保護を減らしたりする内容だ。
一方で、20年の選挙公報では、
「コロナ武漢肺炎から都民の命を守る!」
の大見出しに続いて
「大幅減税による都民救済 都民税0 固定資産税0 都知事給料0」
を最も大きく掲げた。それ以外の公約として
「必要な人に届ける 外国人生活保護の即時撤廃」
「違法賭博を取り締まる パチンコ規制」
を引き続き主張した。
政見放送でも、大筋では同じ内容の主張を展開。新型コロナウイルス感染症を「武漢肺炎」、中国人を「シナ人」と連呼しながら、旧正月(春節)に際して安倍晋三首相や小池氏が中国人の来日を歓迎したメッセージを出したことを非難。その上で、減税の必要性を繰り返した。このように、中国を非難しながら新型コロナ対策としての減税を訴えるスタイルが浸透した層があった可能性もある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)