小池百合子氏が圧勝で再選を決めた東京都知事選挙。J-CASTニュースが投開票当日の2020年7月5日、有権者に都知事へ訴えたいことについて尋ねたところ、特別定額給付金(1人10万円)に関する訴えが最も多かった。「いつに振り込まれるのか」「もっと給付額を増やして」。新型コロナウイルス禍で、家計が火の車に陥った都民の訴えは切実だ。
「家賃が払えない」 派遣切りに遭った女性、悲痛の訴え
旅行代理店で派遣社員として働いていた佐藤尚美さん(34)に、世田谷区内の投票所から出てきたところを取材すると、こう訴えた。
「いったい、いつになったら(定額給付金は)振り込まれるのでしょうか。本当に困ってます。このままだと今月の家賃が払えないんです」
旅行代理店では4年以上働いていたが、コロナ禍で4月末に雇用を打ち切られた。20万円以上あった月収はゼロに。次も旅行関係で働きたいが、就職のメドは立っていない。
世田谷区では5月末から定額給付金の受け付けが始まった。佐藤さんはすぐ郵送で申請したが、7月に入っても振り込まれない。貯金も残り少なく、このままだと、7月分の家賃や光熱費などが払えなくなるという。
「新しい都知事には、とにかく早く入金されるよう、(区に)働きかけてもらいたい。生活がかかってるんです」
「食事は毎日カップラーメンやパン」「給付金第2弾ほしい」
佐藤さんは都知事選で、れいわ新選組代表の山本太郎氏に投票したという。
「新たに全都民に10万円を給付する、と公約に掲げていたので。実現したら、本当に助かります」
世田谷区の別の投票所の近くで取材した、理系の大学院に通う男性(23)も4月、夜に働いていた飲食店でのアルバイトをコロナ禍でクビになった。昼間は研究やウェブ講義で忙しい。でも、夜間にできるバイトは募集が少なく、今は生活費を削って何とかしのいでいる。親からの仕送りはない。
「やっぱり定額給付金を早くもらいたいです。食事は毎日、カップラーメンやパンだけ。できれば、第2弾、第3弾とかもらえると助かるんですが」
男性は小池氏に投票したという。理由は。
「やっぱり、こういう(コロナのような)事態では、実行力が大切だと思います。小池さんはその点、頼りになる。でも、給付金第2弾は難しいかな」
コロナ禍の窮状、浮き彫り 回答者、都知事選で誰に投票?
J-CASTニュースは5日、世田谷区、目黒区、渋谷区で、投票を終えた人に「今、都知事に訴えたい、あなたの困りごと」について質問した(複数回答あり)。また、誰に投票したかも尋ねた。30人(うち男性14人、女性16人)に応じてもらい、このうち、18人が定額給付金の素早い振り込みについて挙げた。うち10人は給付金の追加や増額も求めた。
定額給付金は国の緊急経済対策で、申請の受け付けや振り込みなどの実務は特別区や市町村が担っている。厳密には都知事に権限はないが、取材に応じてくれた人にとって、都知事選での投票がコロナ禍を受けて意思表示をするいい機会になったようだ。
失業や休業、賃金カットなどにより仕事や収入に関して困っていて、「何とかしてほしい」という人は10人。外出自粛や休業要請など、経済に悪影響を及ぼす施策はやめてもらいたいと訴える人は8人いた。実に30人中26人がコロナ禍に関する困りごとを挙げた。
投票した人については16人(53%)が小池氏、山本氏が6人、元日弁連会長の宇都宮健児氏が5人と続いた。
いまだ給付率30%台の区も 「チェックに時間かかってる」
取材現場の一つ、世田谷区は、給付金の給付率が39.3%(7月3日時点)、目黒区が41.9%(6月30日時点)だった。
比較するため、東京23区の最新状況もまとめてみた。各区への取材や各区の公表資料によれば、給付金を受け取りたいという申請があったのは計約470万世帯。このうち、給付の手続きが終わったのは約65%の約310万世帯。ただし、手続きが終わっても、実際の入金までは数日かかるという。
このうち、最も遅れているのが大田区(給付率33.7%)で、江戸川区(同34.5%)が続く。世田谷区の給付率は23区中で4番目に低い。いずれも人口が多く、30万以上の世帯から給付金の申請があった(申請世帯数は大田区が約35万、江戸川区が約31万、世田谷区は約44万)。
手続きの遅れの理由について、大田区の担当者は申し訳なさそうに説明する。
「件数が多く、照合作業に時間がかかっています。(区民から届いた)申請書類のミスや記入漏れも多く、チェックの必要があります。不便をおかけして申し訳ございませんが、1日でも早い給付に努めてまいります」