コロナで演劇とバイトがほぼゼロに
東京に行ってからは居酒屋でアルバイトを続けた。週5勤務を基本とし、月収は約20万円。最もシフトに入った月は30万円以上稼いだ。
「最低限の収入はあったので生活はできました。舞台が入るとバイトの頻度が減るので、入れるときにできるだけ入るようにしていたんです。住んでいるアパートは家賃4万3000円。安いほうだと思います。極力安くしたかったので、不動産屋さんには『事故物件をお願いします』と頼んだのですが、審査が厳しいらしくて通りませんでした」
東京に来て2年弱で8回ほど演劇の舞台に上がった。最初はツイッターなどで演者を募集している劇団に手当たり次第応募し、それを起点に演劇界隈でつながりを作った。
「なりふり構わなかったですね。僕は東京に地盤がありませんから、人と信頼関係をどう築くかってものすごく大切なんだとよく感じるようになりました」
定期的に公演はできているが、演劇による収入はほとんどない。
「あって1回1万円です。出演料というのはなくて、演劇の収入はチケットノルマが基本です。僕自身が主催者からチケットを買い、それを人に売った差額が僕の手元に残ります。買ってくださる人を探すのに苦労します」
主にアルバイトで生計を立てながら舞台に上がっていた佐藤さん。新型コロナウイルスが直撃したのは、そんな東京生活に馴染んできた20年2月のことである。
「コロナの影響で3月の公演がなくなりました。アルバイトも飲食店なので売り上げが激減し、シフトが大幅に削られました。アルバイト先から補償を頂きましたが、生活すべてをまかなえる金額ではありませんでした」
最も沈んだ5月の給料は4万円まで下がった。追い詰められ、消費者金融に設けていた10万円分の口座を50万円分まで引き上げた。「この50万がもし底をついたら、いよいよ僕は終わりですね」と自ら認める綱渡り生活。演劇もバイトもなく、「毎日映画、漫画、ゲーム、ラジオ、時々散歩です。廃人生活だなと思ってました」と刺激がない。