高校の市大会で最優秀賞、ますますのめり込む
その出会いは中学3年生の時である。高校受験のため通っていた塾講師の子どもが、佐藤さんの志望校に通う1歳上の先輩だった。
「その先輩が演劇部、当時は演劇愛好会に所属していました。『どういう活動をしているんですか?』と聞いたら、『週刊少年ジャンプの回し読みをしてるよ』と。面白そうだと思いました。志望高校に無事入学できて、演劇愛好会を見学した時もやっぱり楽しそうで、入ることを決めました」
高校2年生の時、愛好会から演劇部に格上げされ、市大会にも出場できることになった。そこで「人生3本の指に入る感動」を味わった。
「石巻なので、震災や津波をテーマにする学校は多かったです。僕らは同じことはやらないと、あえて違うテーマで舞台を考えました。将来のことを悩んでいる女子高生が、通学の電車内で出会う一癖も二癖もある乗客と接する中で、自分の進路について深く考えていく、というあらすじですが、それでまさかの最優秀賞と県大会出場となりました。結果発表の時に全然呼ばれないのでダメだと諦めていた時に、最後の最後で呼ばれて感動しました。人生のハイライトの1つですね」
ますます演劇にのめり込み、大学でも迷わず演劇サークルへ。楽しかった一方、演劇漬けの毎日となった。稽古のため平日の授業後約3時間、それに土日も費やす日々。だが、厳しさの中にやりがいがあった。
「小学5年生の役を主要キャストで演じたことがあったのですが、下手くそで練習中もコテンパンに怒られて...先輩が食事に連れていってくれた時、店内に流れていたアンジェラ・アキさんの『手紙』を聞いて泣きました。それでもどうにか本番で演じきって、打ち上げで読んだお客さんのアンケートに『小学生の役、ご苦労をお察しします』と書いてありました。感動してまた泣きました。やり切った実感がありました。その後も、一般のお客さんに来ていただく大きい公演が年2回、主に学内でやる小さめの公演が年3回あって、色々な役を演じました。没頭していましたね」
何がそこまで夢中にさせるのか。「何でしょうね...改めて聞かれると難しいですね。面白いんですよ。自分じゃない役になりきる非日常感がたまらないんだと思います」。好きな俳優は森山未來さんだという。