レジ袋有料化が2020年7月1日に開始したことに伴い、買い物用のエコバッグとして風呂敷の需要が高まりつつある。ツイッター上では1日から「風呂敷」に言及する投稿が急増。メーカーへの注文数も大きく増加している。
風呂敷文化の普及を進める一般社団法人ふろしき研究会(京都市)の森田知都子(ちずこ)代表はJ-CASTニュースの取材に、6月に開催したイベントで「予想を超える反響があり、関心の高まりを感じております」と話す。
7月1日から「風呂敷」の投稿が大幅増
容器包装リサイクル法の関連省令改正により、多くの小売店でプラスチック製レジ袋の有料化が必須となった。例外として、プラスチックフィルムの厚さ50マイクロメートル以上のもの、海洋生分解性プラスチックの配合率100%のもの、バイオマス素材の配合率25%以上のものは対象外だが、スーパーマーケットやコンビニをはじめ、日常生活で利用する多くの店舗で有料化がはじまっている。
再利用できる買い物用エコバッグに関心が集まる中、注目されているのが「風呂敷」だ。小さく畳んで携帯できるのはもちろん、繰り返し利用するにしても洗いやすい点は、新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、衛生面でも評価する声がある。
SNS解析ツール「Social Insight」を使い、ツイッター上で「風呂敷」か「ふろしき」を含む投稿数の推移をサンプリング調査したところ、6月中を1日当たり150~250とすると、7月に入ると1日は約500、2日は約4200、3日(18時30分現在)は約900と急増した(いずれもリツイート、スパム、リンク付き投稿を除いて収集)。
7月1~3日の投稿で「風呂敷(ふろしき)」と一緒に書き込まれている言葉を調べると、名詞では「便利」「バッグ」、動詞は「洗える」「買う」、形容詞は「欲しい」「可愛い」などが上位に並ぶ。レジ袋有料化の開始に合わせ、ツイッターユーザーの間でエコバッグとしての関心が高まっていることがうかがえる。
ツイッター上では「手作りマスクの次は風呂敷ブームがくるかも」「風呂敷は便利だよね~。ちょいちょい使うんだけど一枚しかないからなぁ。丈夫で洗濯しやすいやつ、もう一枚くらい欲しいかも」といった声のほか、「家で結び方をしっかり練習してから使いましょう。ほどけると色々大惨事になります」と注意を促す声もある。
通常1日20件前後の注文が、7月2日約60件、3日は約120件
売り上げにも表れはじめているようだ。1937年創業の老舗風呂敷メーカー・山田繊維(本社・京都市)の広報・山田悦子さんは3日、J-CASTニュースの取材に、「問い合わせは6月から増えていましたが、7月に入って急増しています」と話す。
ウェブでの注文数は、この時期として前年比3倍ほど。通常は1日あたり20件前後の注文が、7月2日は約60件、3日は約120件と大幅に増加した。「新型コロナウイルスの影響で店頭よりオンラインで注文されるお客様は多くなっていると思いますが、通常では考えられない数です」と話している。特に、主な購入層より若い30代を中心に増えているといい、「これまでよくご利用いただいていた層とは違う方々からお買い求めいただいています」という。
デザインの豊富さも人気の要因としてあげている。
「着物に合わせて使うものだったので、色や柄が落ち着いたものが多かったのですが、最近は洋服に合う明るめのデザインも多くラインナップしています。現代のライフスタイルに合わせて楽しめると思います」(広報・山田さん)
利用シーンが幅広いなど、利便性の高さも特徴だ。
「エコバッグと風呂敷を両方持っていれば、エコバッグに入れづらい物を風呂敷に包むという使い方もできると思います。風呂敷は包む物の形状によって結び方や持ち方を変えることで、柔軟に対応できます。また、特に撥水加工されている風呂敷は、冷えた飲み物や冷凍食品が汗をかいても液漏れしませんし、雨の時にカバンにかけたり、アウトドアの時に物を運んだりと、買い物以外にも用途は広いです」(同)
風呂敷はサイズ展開も幅広いが、どれくらいの大きさが便利だろうか。「どこで何を買うかにもよりますが、スーパーでの買い物なら100センチメートルあると使いやすいです。一方、コンビニであれば70センチくらい。あまり大きいと持て余すかもしれません」とアドバイスした。
風呂敷は1枚布のため洗いやすく、衛生的という点でも利便性が高い。レーヨンやシルク製はドライクリーニングが必要だが、綿やポリエステル製であれば家庭で洗える。「個別に風呂敷の洗濯表示を見てご確認いただければ」としている。
「おしゃれな柄」「意外に簡単」の声
使用時のコツや注意点はあるか。日常生活に風呂敷を生かす方法などを模索する一般社団法人ふろしき研究会の森田知都子代表は取材に対し、循環型社会実現のための「3R」のうちリユース(再使用)とリデュース(ごみの減少)に当てはまることや、日本文化の継承にも繋がることを指摘したうえで、風呂敷の使い方についてこう話す。
「エコバッグとしての使用については、個々人の暮らしにあったふろしきとバッグの形状を選んでいただくことです。バッグとして形を成すため、真結び、ひとつ結びといった結びをマスターすること、結びのコツを把握することが必要です。 結び方は、本や指導書、動画を見てご自分で学ぶ方もおられます。近年、暮らしの中から結ぶ機会が少なくなり、真結びできない方、解けやすい縦結びになる方が多いようです。結びを体で覚えておられる年配の方に教わったり、講習を受けていただいたりするといいでしょう」(森田代表)
同研究会は6月6~30日、6会場で「ふろしきエコバッグを持とう!」という体験会を開催。「予想を超える反響があり、関心の高まりを感じております。『こんなおしゃれな柄があるのね』『意外に簡単』などの声も多いです」(森田代表)と需要は広がっているようだ。
「基本的に『真結び』ができるとほとんどの包み方はできます」
風呂敷の普及などに取り組む日本風呂敷協会(京都市)事務局の担当者は取材に対し、風呂敷を使用する上でやはり「結び方」の重要性を次のように指摘する。
「コツや注意点としては、『正しく結ぶ』ということに尽きます。ほどけると中の物がこぼれ落ちたり、壊れてしまったりするためです。結び方を学ぶ方法としては、書籍やウェブなどにある動画、また、ふろしき教室などで体験することなどがあります。基本的に『真結び』ができるとほとんどの包み方はできます。真結びはほどけにくく、また使い終わると結びは解きやすい実用的な結び方です」(担当者)
「真結び」は日ごろ紐などを結ぶのに使う「固結び」に近く、間違いやすい。担当者は「真結びはリボンの部分が自身と平行になる形の結びです。リボンが縦になる『縦結び』にならないことが重要です」としつつも、「風呂敷の包みを見ると一見難しそうですが、やってみると簡単なものが多いです」とも付け加えた。
エコバッグとして使用しやすい素材やサイズについては「洗えて、サイズ展開が多い50センチから2メートルまでのもので、結びやすい綿素材がおすすめです。ポリエステルは撥水など機能性を持たせたものが多いです。こちらもコンパクトにたためる物が多いので、エコバッグとしても使いやすいですが、綿素材と比べるとほどけやすいので、しっかりと結ぶことが重要です。一方、絹はどちらかというとフォーマル用途です。多く使用されている縮緬(ちりめん)素材は水に濡れると収縮します」とのことだった。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)