保阪正康の「不可視の視点」
明治維新150年でふり返る近代日本(50)
童謡増やして打ち出した「児童中心主義思想」

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国語の教科書は童謡が3分の1以上占める

   さて第3期の国定教科書の内容を見ると、「大正7年から実施された灰白色の国語教科書には童謡、童詩などのような文学主義的な教材が多くなっている。たとえば巻一を取ってみると、全巻54ページのうち童謡は21ページで、3分の1以上を占めている。これは明治の国語教科書にはまったく見られなかったこと(以下略)」(『日本人の履歴書』唐澤富太郎)というのである。唐澤によるならば、この特徴は「児童中心主義の思想」の表れというのであった。教育内容が真に児童向けになったということだ。

   少なくともこの時代には日本は軍事主導体制に自省が起こっていたといえるように思う。それは近代日本が初めて見せた人間の顔であったといっていいように、私には思えるのである。「モモタラウ」などは、「ムカシ、ムカシ、オジイサントオバアサンガアリマシタ」で始まっていて、11ページにわたってそのストーリーが紹介されていたというのであった。まさに児童が中心であった。児童生徒が興味を持つような記述、そしてその話の中から児童が何らかの心得を獲得するような配慮をしているのである。

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