岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
混乱と分断の中の「独立記念日」

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「第2の南北戦争が起きるかもしれない」

   収束の方向に向かうかに見えたコロナの感染急増が、ここに来て深刻化している。2020年7月に入り、1日の感染者数が初めて5万人を超える日が続いている。累計の感染者数は268万人、死者数は13万人となった。

   全米40州近くで、最近2週間の新規感染者がその前の2週間と比べ増えているだけでなく、検査の陽性率と入院者数も増加している。多くの州で、レストラン店内での営業や、バー、映画館の再開を延期するなど、見直しを始めている。

   ニューヨーク市では混雑を避けるために、独立記念日だけのイベントだった花火を数日にわたり、1回5分間、場所を変えて打ち上げている。

   コロナ感染の危機感は高まり、そのうえ、極左と極右の意見の激しい対立に、「第2の南北戦争が起きるかもしれない」と本気で心配する人もいる。

   アメリカはこれからどうなっていくのか。

   こんな状況でも、オハイオ州コロンバス郊外に住むブライアン(36)は、「僕は楽観的なんだ」と電話の向こうで言う。

「これまでもいろいろな危機があったけれど、乗り越えてきたよ。必要なのは、対話だ」

   考え方や信条は違っても皆、米国の市民。この国を愛し、住みやすい場所にしたいと思っていることに変わりはない。メディアやSNSでは、注目を引きやすい暴力や破壊などの過激なニュースや画像が取り上げられやすいことで、分断が強調されているともいえる。

   ブライアンは続けた。

「まずはみんなが協力して、コロナをやっつけることだ。外出を控えて、マスクをして。コロナが収束して、外に出てみればわかる。人々は人種を超えて、見知らぬ人とも楽しそうに会話しているよ。人はそんなに変わらないものだよ。トランプ支持者の僕だってね」

   そう言って、笑った。(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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