7月4日は、米国の独立記念日。イギリスの統治下にあった北米13の植民地が、独立を勝ち取った祝日だ。
毎年、全米各地で盛大に花火が打ち上げられ、パレードやコンサートなどのイベントが開かれる。家族や友人とバーベキューやピクニックを楽しみ、この国の独立を祝う。街中が星条旗であふれ、最もアメリカらしい祝日だ。
しかし、2020年5月末から今も続く人種差別に対する抗議デモと一連の動き、7月に入ってからの新型コロナウイルス感染の急増、11月に控える大統領選と、米国は混乱し、分断されているようにみえる。今年はいつもと違い、人々の間に悲観的な空気も流れている。
3人に2人が、米国は「間違った方向を向いている」
2020年6月末に行われた「USAトゥデイ」の世論調査によると、アメリカ人の3人に2人が、米国は「間違った方向を向いている」と答えている。
「今年は独立記念日を祝う気持ちにはなれない」と私に電話で話してくれたマディ(25、イリノイ州シカゴ在住)は、BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命を軽んじるな)の運動に積極的に参加してきた。 「黒人の命を虫けらのように扱う国に、敬意は払えない。21世紀のこの時代に、警官による暴力が立て続けに起きていることが、世界中の人の目にもさらされて、この国の信頼も大きく失われた。トランプが大統領だということが、アメリカ人として恥ずかしい」
前出の世論調査では、トランプ支持者の10人に9人が、米国は「最も偉大な国、あるいは偉大な国の1つだ」と答えているのに対し、バイデン支持者の10人に6人が「平均か、それ以下」と回答している。
ジョージア州コロンバス郊外に住む80代のマークは、私との遠隔取材の画面の向こうで、首を何度も横に振った。
「こんな悲痛な思いでこの日を迎えるのも、珍しいよ」
共和党を支持するマークは、一部の民主党支持者らが、奴隷制度を支えた歴史的人物の像を破壊・撤去しようとしていることに触れた。
「警官の暴力的行為が存在することも、黒人に対する差別が未だ続いていることも、よくわかっているよ。それは何とかしなければならないと、共和党支持者だってほとんどが思っている。 でも、極左の連中がやっていることはあまりにも乱暴で、反発を生むだけだ。当時の時代背景を無視して、しかも反論の余地も与えずに、強引に倒したり破壊したりするのが、民主主義なのか。極左の言い分をのみ続けていたら、自分たちが守ってきたアメリカが、どんどん壊されていく。こんなことは言いたくないが、民主党支持者のなかには、新しく来た移民も多い。彼らに愛国心はあるのだろうかと、思ってしまうよ」